【視点】太陽光発電の出力制御に思う

『原子力資料情報室通信』第536号(2019/2/1)より

【視点】太陽光発電の出力制御に思う

1月3日に九州電力は、太陽光発電の一部運転停止を求める出力制御を行なった。昨2018年10月13日、14日、20日、21日、11月3日、4日、10日、11日に続いて9回目の実施(離島での出力制御を除く)である。10、11月の8回はいずれも土曜・日曜で、1月3日は正月休みだ。
春や秋の休日と正月休みには電力需要が低下し、太陽光発電が活躍する日中に供給力が需要を大きく上回る。火力発電を抑制し、余剰電力を他社に送電し、また、揚水発電所での揚水や蓄電池変電所での蓄電を行なったりしても、まだ供給力が大きいときに、太陽光発電や風力発電の出力制御が行なえるとされている。実施したのは、いまのところ、九州電力のみだ(風力発電での実施は試験的で、11月3日のみ)。
年間で最も需要が低下するのはいわゆるゴールデンウィークの時だが、昨年のゴールデンウィークには九州電力でも出力制御は行なわれなかった。当時、原発は玄海原発3号機しか動いていなかった。ところが10月以降は玄海原発3、4号機、川内原発1、2号機と4基がそろってフル稼働していた。海外では再生可能エネルギーより先に原発が抑制される(もちろん、こまめな制御はできない)のに日本では逆なので、秋~冬期の最大需要の40%強、最小需要に対しては50%を超える原発はフル稼働のまま、自然エネルギーの出力が制御されるのである。
10月21日と11月4日の出力制御が最大となった時間には、川内原発1基分を上回る93万kWの太陽光発電が制御された。火力発電では400万kW以上と、原発4基分に匹敵する出力が制御されている。他の電力会社に約200万kWが送られ、揚水には160万kWとか180万kWとかが使われている。
ならば原発を止めればよいではないか。と言うと、すぐに反論があるだろう。電力需要のピークは午後3時ころだと以前には説明されていたが、2010年ころから夕方の6時ころへと移ってきた。その時間だと、太陽光発電の発電量はゼロとなっている。最大時には600万kWにもなる太陽光発電だから、差はきわめて大きい。
とはいえ、太陽光発電については、あらかじめ出力の予測ができる。いきなり、それも複数基が同時に停止することがありうる原発が動いているよりも、本来的により堅実な対応が可能である。ただし、そのぶん火力発電の発電量が増えてしまう。電力需要全体を減少させることが、なにより大事である。と同時に、需要が小さくなっても再生可能エネルギーをもっと使えるようにする条件整備が欠かせない。出力予測の精度も向上させる必要がある。再生可能エネルギーの太陽光一辺倒も、見直されるべきだと思う。
再生可能エネルギーの出力制御を低減するとして、資源エネルギー庁でも「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」での議論などを通じて対策を進めようとしている。事故を恐れて電力会社の間の送電量を極端に制限してきた規制の緩和が昨2018年から始まり、送電可能な量がさらに拡大されることとなった。火力発電の出力制御の最低出力が引き下げられてきた。しかし、その本気度には疑問符も付く。
電力会社は、当然ながら自社の都合ファーストである。そのことは、九州電力から他社への送電量実績は、供給力が過剰となったとされる時に、逆に減っていることにも見て取れる。しかも日本の大手電力会社は、発電・送電・配電の一貫体制を自社内で完結させてきた意識が根強い。
それはまさに当然のことだとしたら、送電を受ける会社にメリットを与える制度が要る以上に、もともと自然エネルギー嫌いでもある電力会社の意識改革のほうが急務かもしれない。
いずれにせよ、原発を止めればよいというだけではすまない(むろん原発は止めなくてはならない)からこそ、早急に、かつ長期的な視点をもって対処する必要があるだろう。

(西尾漠)