【原子力資料情報室声明】 東北電力女川原発2号炉の設置変更許可は妥当か
東北電力女川原発2号炉の設置変更許可は妥当か
2020年2月28日
NPO法人原子力資料情報室
2月26日、原子力規制委員会は、かねて審査中だった東北電力女川原子力発電所2号炉の設置変更申請を新規制基準に適合するとし、原子力委員会および経済産業省の同意をえたうえで、許可した。
原子力規制委員会は、6年余にわたった審査であり、科学的、技術的知見に絞って意見公募をおこなった(2019・11・28~12・27の30日間で979件)結果も踏まえたという。
この設置変更許可は、3・11東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた東京電力福島第一原発の原発震災を経験し、あのような事態を防止することを目的としたとしている。
しかし、審査内容を見ると多くの疑問が残る。幾つかを挙げてみよう。
●新規制基準策定の時点で、福島原発事故と同様の事故を防止するための基準を策定するために「十分な知見がえられていたと考えています」と言う。しかし、福島原発事故の検証は未だ道半ばである。新潟県技術委員会では柏崎刈羽原発の安全性を審議するために福島原発事故の検証の議論が進んでいる。2019年1月、その場に出された日本原子力学会の調査によると、73項目に抽出された課題のおよそ半数は未解明である。
●基準地震動の策定は最新の科学的・技術的知見を踏まえて適切になされたと言い、敷地に大きな影響を与えると予想される地震のみを考慮の対象とした。しかし、敷地に大きな影響を与える可能性のある将来の地震のすべてを予想できるというのだろうか。
●3・11地震で被災した女川2号炉の建屋には1130ヵ所でひび割れが生じ、剛性が著しく低下した。コンクリート強度は建屋の耐震壁から抜きとり試験で強度低下がないことを確認していると言う。だが、抜き取り検査では済まないのではないか。また、地震応答解析で過不足なく健全性を確認することが可能だろうか。かつ、耐震性を保証できるのか。
●3・11の際、女川原発では「止める」「冷やす」「閉じ込める」の機能に異常はなかったと言うが、綱渡りの状況だったのではないか。一つ間違えれば、どうなっていたか分からない。ヒューマンエラーをゼロにすることはできるだろうか。
●あらゆる自然災害に対して安全施設の機能が損なわれないように設計すると言うが、果たして、それは可能であろうか。
今回の設置変更に関わる審査は、基本設計ないし基本的設計方針を確認することにかぎられている。実際にその基本方針が貫徹されるか否かは今後に残された。このことを、厳しく注目していたい。