【原子力資料情報室声明】関西電力に安全を語る資格はない 速やかに原子力から撤退すべき

関西電力に安全を語る資格はない 速やかに原子力から撤退すべき

2020年3月23日
NPO法人 原子力資料情報室

3月14日、関西電力資金還流事件に関して、第三者委員会が報告書を発表した。関西電力は1980年代~現在に至るまで、長年、地元有力者の森山栄治氏から多額の金品を受領しており、関西電力の役職員は森山氏に工事等に関する情報を不適切に提供し、同氏関係先への事前発注約束なども行っていたことが明らかとなった。


 報告書によれば、金品を受け取っていたのはわかっただけで、関西電力やその関連会社の役職員計75人、3億6000万円に上る。森山氏からの金品受領は1987年から始まるが、福島第一原発事故以降、提供される金品の額は急激に増加した。なお、総額の7割以上は豊松秀己元副社長(1億1000万円)、鈴木聡元常務執行役員(1億2000万円)、森中郁雄元副社長(4000万円)が受け取っていた。 関西電力は森山氏の要請に応じ、380件以上に上る工事の発注約束などを事前に与えていた。また、森山氏関連企業は多くのケースで特命発注を受注しており、その中には特命発注が必要だったか疑問の余地があるものもあると指摘されている。競争入札でも入札条件を事前に知らされた結果、競争が適切に行われていなかった可能性があるとされている。異常な事態が長年にわたって継続していた。


 さらに、報告書に示された1994年3月25日付「森山氏情報資料」には、たとえば、1985年3月には、地元組合からの苦情について、「当該組合を説得し個人の問題とするよう切り離し工作をしてくれた」や、1987年4月にあった高浜3号機での業者圧死事故にかんして、「警察・地元関係に対する無言の圧力により穏便に済ますことができた」といった記載がある。第三者委員会は関西電力が森山氏という特異なキャラクターに弱みを握られて共犯関係になったと指摘しているが、関西電力が、地元有力者である森山氏を利用して、反社会的行為に手を染めたことが主なのではないか。


 報告書からわかることは、関西電力が自ら行ってきた反社会的行為を明るみにだされることを恐れて、そういった経緯を知る森山氏からの脅しに唯々諾々と従ってきたという姿だ。くわえてさらに深刻なのは、森山氏からの金品提供の事実が金沢国税局の知るところとなって以降の関西電力の行動だ。多数の役職員が多額の金品を受領していたことが明らかとなって以降も、問題の矮小化を図り、外部に情報が漏れることを極端に恐れ、ガバナンスを機能させなかったことだ。社外取締役には情報を伝えず、常勤監査役は取締役会にこの事実を伝えることすらしなかった。さらに衝撃的なのは、金品受領に関して社内処分を受けたものが昇格したり、退職した豊松副社長にかんしては、エグゼクティブフェローとして、副社長時の給与をベースに設定された月額370万円に加えて、金品受領について追加納付した納税分月額30万円、さらに過去の経営不振時の役員報酬カットへの補填分月額90万円、合計月額490万円を支払うこととし、追加負担が発生した3人についても役員退任後5年間かけて会社が負担することを決めていたという事実だ。内部に甘い体質は、報告書の発表直後に内部昇格を決定した森本孝新社長についても変わらない。森本新社長自身は金品を受け取っていなかったものの、本当に再発防止を徹底したいのであれば、このような事態を招いた旧経営陣を特別背任罪で刑事告訴するなどして、自ら膿を出す姿勢を示すべきだ。


 このような異常な事態が原子力部門を中心に蔓延していたということは、このこと自体が、原子力の陰の部分を如実に示すものだ。そして、その陰にけん引されて、関西電力は、反社会的な行為に手を染め、ガバナンスを全く機能させない状況にまで追いやられた。


 チェルノブイリ原発事故以降、原子力業界では安全文化という言葉が盛んに飛び交ってきた。原子力施設の安全意識を文化と呼べるほどまで深化させる必要があるという意味だ。しかし、関西電力の現状は、文化以前に会社として企業倫理が欠如しているといわざるを得ない。もはや安全をかたる資格はなく、早急に原発の運転を停止すべきだ。


 また、原子力という問題を抱えるのは関西電力に限らない。他の事業者も、過去に地元有力者をつかった地域での工作を、多かれ少なかれ行ってきた。そうした事実を各社ともに自ら明るみに出すべきだ。自らの過去に向き合わずに、安全文化といってみたところで、結局は単に表面上のスローガンに堕すのみだ。