敦賀原発断層記述改ざん問題

『原子力資料情報室通信』第554号(2020/8/1)より 

日本原子力発電(株)敦賀原発2号機の新規制基準適合性審査が揺れている。2020年2月の審査会合で日本原電による敦賀原発2号機の審査資料の無断書き換えや削除が判明したからだ(書き換えの例は下記図参照)。なお、2019年の審査会合では日本原電から、過去に提出した審査資料に1,140か所もの誤記があったとも報告されていた。
敦賀原発2号機では、2015年に原子力規制委員会の有識者会合が「敦賀発電所2号炉原子炉建屋直下を通る D-1 破砕帯は(中略)『将来活動する可能性のある断層等』である」と判断する報告書を取りまとめていた。新規制基準は将来活動する可能性のある断層の上に安全上重要な施設を設置することを禁じている。これに対して日本原電は強く抵抗を示し、審査会合では、この5年間、断層に関する議論が続いてきた。
日本原電は書き換え・削除について「データの改ざんや恣意的なものではない」と説明しているが、2月7日の審査会合で規制委員会の石渡明委員は(1,000件を超える誤りの反省を踏まえて資料を準備してもらったが)「基本的なデータが、後から別の種類の観察の結果として違う結果が出てきたので、その前の記述を残すのではなくて、その上に残して上書きするのではなくて、削って改めて書き直すということをやっておられるというのは、 これは非常に問題が多い」、「薄片を観察されて記述を変えたところが(中略)特定の場所に限られていると。そこは、まさに今問題になっているK断層の延長を判断する上で非常に重要な場所(中略)ほかの場所の記述、柱状図の記述については全く手がついていない」と指摘している。
日本原電の資料の品質は極めて疑わしいところだが、東海第二原発の品質について、規制委の更田豊志委員長は自分が委員長になる前に委員として審査していたころの印象として「東海第二のときは、率直な印象を申し上げると、日本原子力発電というのは技術的に手応えのある会社だという印象を受けた」と国会で答弁している。しかし本当にそうだろうか。たとえば日本原電は審査資料の誤記は東海第二の審査書でも発生していたとしている。日本原電の品質保証体制が極めて疑わしいことは、これらの例でも明らかだろう。

(松久保肇)

出典:第865回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合 資料2-1 www2.nsr.go.jp/data/000313061.pdf%5B/caption%5D

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