【原子力資料情報室声明】容量市場、引き返すなら今だ。
【声明】容量市場、引き返すなら今だ。
2020年9月15日
NPO法人 原子力資料情報室
2020年9月14日、電力広域的運営推進機関から2024年度分の容量市場の約定結果が発表された。約定総容量は1億6,769万kW、約定価格は上限価格から1円/kW安い14,137 円/kW、経過措置を踏まえても約定総額は1兆5,987億円となった。衝撃的な結果だ。
容量市場は将来的な電源不足に備えて、日本全国で必要な電源容量の確保のために、稼働できる電源にその設備容量の対価を決めるための市場だ。この市場の費用は全ての小売電気事業者、送配電事業者が負担し、その料金は一部を除き、電気料金に転嫁される。約定総額から概算するkWh当り負担額は約1.9円、一般家庭の負担で考えると年間約1万円の負担ということになる。なお、同日、電力・ガス取引監視等委員会から容量市場の監視結果中間報告が発表されたが、現在のところ不正はなかったとされている。
発表された約定結果では、どの電源が約定したのかといった情報は開示されていないが、入札量と約定結果から、一部のLNG火力、石油火力などの入札価格で約定価格が上がったことがわかる。また、入札された原発や石炭火力はほぼすべて約定したものと見られる。
入札は電源単位で行われ、落札すると、約定価格に応札容量と経過措置係数(2010年度末以前に建設された電源に対して支払額を減額する。2024年は58%、毎年7%加算し、2030年に終了する)をかけた交付金がもらえる。たとえば100万kW級の原発の場合、定期点検などを考慮した80%の設備利用率で応札したと仮定すると、66億円が交付金額となる。
旧一般電気事業者(旧一電)であれば、ホールディングス傘下に独占時代に電力消費者の負担で建設してきた電源を保有しているため、小売部門が負担したとしても、結局のところ、支出は相殺される。一方、新電力の多くは発電部門があってもすべての供給力を賄えるほどは確保しておらず、卸電力市場で供給する電気を調達している。ただでさえ新電力の売電単価は旧一電に比べて約1.7円/kWh高くなっている。ここに1.9円/kWh(新電力全体の負担額は約2,490億円)の上乗せが発生すれば、企業努力では埋めがたい。さらに、容量市場は原発や石炭火力からの電気を使いたくないとして、新電力に切り替えた消費者に対しても原発や石炭火力の維持費を徴収する仕組みでもある。
将来的に不足する懸念があるとされている電源についても、少なくとも2029年度までの推計では大きな余裕があることがわかっている。このまま2024年に容量市場の実負担が始まると、新電力は壊滅するうえ、石炭火力・原発が維持され、エネルギーシフトにおいて取り返しのつかないことになる。この間、経済産業省は容量市場の導入に邁進してきたが、いまからでも遅くない。容量市場はいったん立ち止まり、白紙から検討しなおすべきだ。
以上