核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた声明

核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた声明

2005年5月2日
原子力資料情報室

 ニューヨークの国連本部において、5月2日から27日まで核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催される。この条約は5年に1回、その進捗状況が会議で検討されており、前回の2000年では、具体的な日程は含められなかったものの、核兵器廃絶の合意書が採択されるという成果が得られた。

 しかし現在、世界の状況は一変した。締約国であるイランや北朝鮮の核開発疑惑、そして締約国以外のインド・パキスタンの核実験などは、NPTの在り方に大きな疑問を呈している。さらに非国家組織による核開発や核物質・放射性物質を用いたテロリズムへの恐怖、また核の闇市場の問題などへの対応もNPTは迫られている。

 NPT再検討会議を前に、日本で約30年にわたって政府や企業とは独立した立場で原子力政策を批判してきた当室は、既に4月21日、小泉内閣総理大臣に対して核燃料サイクル政策の再考を求める要望書を提出した。また、22日には、国内の74の大使館に対し、再処理計画を支持してはいないことを伝えた。

私たちはNPT再検討会議に向けて以下のように訴える。

日本は、六ヶ所再処理工場の運転計画を白紙に戻すべきである。

六ヶ所再処理工場は、非核兵器国で初めての大型再処理施設である。年間800トンの使用済み燃料を再処理して、約8トンのプルトニウムを毎年取り出すとされる。

このプルトニウム量は、有意量、即ち核爆弾への転用が可能と定義される量の1,000倍に相当する。取り扱い量がこれだけ大きくなると、核物質が核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを確認する保障措置は、技術的に成り立たない。

日本は現在、海外に多くの余剰プルトニウムを抱えており、そのうえ国内でプルトニウムを取り出そうとすることは、周辺諸国に対して対抗的な核開発を促しかねない。

六ヶ所村の再処理工場はまだ試験運転の段階であり、今ならば中止に伴う混乱は十分に対応可能であり、経済的にはむしろコストを小さくできる。

さまざまな脅威を引き起こしている現在の核問題は、すべて、原子力の平和利用と軍事利用を区別しようとする無理な対応に起因する。エネルギー問題、環境問題、人権問題だけでなく、安全保障問題からも、原子力の「平和利用」の今後に対して、冷静な判断を行うべきである。

以上