北海道 寿都町と神恵内村周辺で相次ぐ 核のゴミ拒否条例

『原子力資料情報室通信』第563号(2021/5/1)より

 北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で文献調査が実施されている。寿都町では町長の文献調査への応募意向に対して強い反対があり、署名活動や住民投票条例の直接請求が行なわれたが、賛否同数による議長判断で退けられ、町長が応募したのだった。
 その後NUMOは3月26日に「NUMO寿都交流センター」、「NUMO神恵内交流センター」ならびに両センターを支援する「札幌事務所」を開設し、職員を常駐させている。NUMOの「対話活動計画」によれば、「調査地域のみなさまとの間で相互理解を深める活動を継続的に行うとともに、共生関係を築くために様々な交流を図り、地域の信頼を得られるように努める」としている。「『地層処分事業を必ず実現させる』との強い意思をもって」臨む。2015年に改訂された基本方針では、「関係住民が最終処分事業について学習する機会が継続的に提供されることが重要であり、機構及び国は、専門家等からの多様な意見や情報の提供の確保を含め、こうした学習の機会の提供を継続的かつ適切に支援する」としているものの、実態は、本格的な説得活動の開始と見るべきだろう。
 これに対して、寿都町では、3月8日に、概要調査に入る前に住民投票を実施する条例が制定された。片岡町長は精密調査前に住民投票を実施する条例を提案していたが、概要調査前にも実施する修正案が提出され、こちらが可決された。文献調査応募前に住民投票を求めていた住民の間には根深い不信感があるようだ。
 寿都町に隣接する島牧(しままき)村では20年12月15日に、黒松内(くろまつない)町では21年3月16日に放射性廃棄物の持ち込みを拒否する条例が制定された。神恵内村に隣接する積丹(しゃこたん)町では3月12日に拒否条例が制定されている。両地域を取りまいての拒否条例である(図参照)。表現に若干の違いがあるが、いずれも「いかなる場合も放射性物質等を村内(町内)に持ち込ませない。放射性物質の処分、保管及び研究等に関するすべての調査及び施設の建設を受け入れない」としている。蘭越(らんこし)町では持ち込みを拒否する議会決議が3月18日に満場一致で可決された。報道によれば、核には触れない決議案を模索する動きもあった中で、町民の半数近くが参加した署名が拒否決議へと流れを変えたようだ。

放射性廃棄物の持ち込みの拒否条例を制定した町村(蘭越町は議会決議)

 NUMOも経済産業省も、住民合意が得られていない状態を十分に知りながら、また北海道条例で特定放射性廃棄物を「受け入れがたい」とする条例があるにもかかわらず、応募を受けつけ、申し入れを行なった。2000年の最終処分法制定以来、文献調査へ入れていない状況から、少し進んだという実績作りだったと言える。こうした行為は厳しく批判されるべきであろう。

 本号表紙には放射性廃棄物の持ち込みを拒否した条例を制定した自治体を図にした。個々の条例は以下のアドレスを参照して下さい。   

ksueda.eco.coocan.jp/jyourei1.html

(伴英幸)

放射性廃棄物の持ち込みを拒否する条例が成立している市町村。図示していないが、このほかに、福島原発事故による指定廃棄物の最終処分場の受け入れを拒否した条例が宮城県加美町と栃木県塩谷町で制定されている。

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