【視点】経産省・NUMOの失敗その後
昨年11月号に「経産省・NUMOの失敗」と書いた。北海道寿都町と神恵内村で高レベル放射性廃棄物地層処分地選定の入り口である「文献調査」に向けた第一歩が踏み出されたことで経済産業省も原子力発電環境整備機構(NUMO)も大きな成果をあげたかのようだが、寿都町の片岡春雄町長が「肌感覚」で町民の賛成を得られていると応募に踏み切るなど、処分地選定プロセスの不合理を改めて天下に知らしめてしまったこと、「科学的適正マップ」はどこへやら、けっきょく「受け入れてくれるところが適地」だと宣伝することになってしまったことなどを「失敗」と断じたものだ。
そのなかで、経済産業省が神恵内村に「文献調査についての御理解と御協力を」と申し入れたことについて、次のように述べた。「国からの申し入れでは、市町村からの応募に対して必要となる調査の実施見込みのNUMOによる確認は実施済みであることが定められている。後になって『確認をして申し入れた』と強弁しているが、いつ確認したというのか。およそ信用しがたい」。
その後、開示請求をして、経過を示す資料を得た。それによれば経済産業省資源エネルギー庁がNUMOに「確認をお願い」したのが2020年10月2日、NUMOから「確認しました」と回答されたのが同月7日だという。神恵内村への「御理解と御協力」の申し入れは8日だから、確かにNUMOの確認を得て申し入れたことになる。とはいえ神恵内村の高橋昌幸村長が申し入れ翌9日に受諾を表明した(正式な受諾書は15日付)ことに「敬意と感謝の意を表した」NUMOの近藤駿介理事長コメントは、確認に一言も触れていない。何となくすっきりしない感が残っている。
ちなみに、昨年11月号で確認が申し入れの前提だと「定められている」としたのは不正確で、実際には定めはないらしい。NUMOのホームページに掲載されている「文献調査に関するパンフレット」には「申入れ前に調査の実施見込みを確認」とあるが、そのことはどこに定められているのかとNUMOの広報室に質問をしたのに明快な回答はなかった。「確認をお願い」した文書にも、公文書にはほんらい必要な、なぜお願いするかの根拠は記されていなかった(経済産業省から神恵内村への申し入れ文書では「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針に基づき」と根拠が明記されている)。
すっきりしない感は、一連の流れの不自然さからも生じている。経済産業省が神恵内村に申し入れたのは10月8日だが、その直前までは神恵内村からNUMOへの応募という動きだった。10月2日には村議会の総務経済委員会が、村商工会提出の応募請願を採択していた。そのまま応募を待てばよいのにその日に資源エネルギー庁は、申し入れを前提にNUMOへの確認のお願いをしている。8日に村議会本会議で請願が採択され、マスメディアで「応募表明へ」と報じられた直後に申し入れが行なわれた。資源エネルギー庁とNUMOと神恵内村(村長?)とで何らかの裏取引があったようにみえないだろうか。
閑話休題。開示された文書に戻る。NUMOによる神恵内村の調査実施見込みの確認結果が、初めて開示された(NUMOが寿都町に通知した確認結果文書はホームページに公表されたが、資源エネルギー庁に答えた神恵内村の確認結果は掲載されていない)。その確認結果によると、大部分が「好ましくない特性があると推定される地域」のうちわずかにある「輸送面でも好ましい地域」に「金属鉱物」に関する「好ましくない範囲」があるとされる。「鉱物の存在が確認されていない範囲もあり、調査をすればそうした範囲が確認できうる」というが、何とも白々しい。
よりによってこんなところに最初の申し入れをした失敗は、やはり明々白々だ。
(西尾漠)