【原子力資料情報室声明】放射性廃棄物の海外輸出は許されない  日本原子力研究開発機構は資源と称して核のゴミを輸出する計画を直ちに撤回すべき

2022年3月2日

NPO法人原子力資料情報室

原子力資料情報室が入手した情報によれば、日本原子力研究開発機構(JAEA)は東濃地科学センターと人形峠環境技術センター内で保管している国内外産のウラン鉱石およびウランを吸着させたイオン交換樹脂等約136トンの海外処理を委託する方針を固めた模様だ。輸出先は米国唯一のウラン製錬施設であるホワイトメサ製錬所(ユタ州、Energy Fuels社)である。

JAEAは輸出されるものは廃棄物ではなく、資源だと称している。だが、実態は東濃鉱山の閉山や国内にウラン製錬施設が存在しないことなどから、取り扱いに困ったウラン鉱等をEnergy Fuels社に処理料と引き換えに引き取ってもらうというものだ。製錬後のウランや鉱滓は日本に返却されず、米国内で利用、または処分される。ウラン製錬では、ウラン鉱の大半は鉱滓になることから、資源と称しながら、事実上、放射性廃棄物の輸出を行うことになる。

放射性廃棄物等安全条約や外国為替及び外国貿易法に基づき、放射性廃棄物の輸出は原則禁止されている。今回の輸出は、使い道のないものをウラン資源と称し、国の機関が法の抜け穴をかいくぐるものだ。さらに留意すべきは、ホワイトメサ製錬所の近郊にはユートマウンテンユート先住民のホワイトメサ保留地があり、住民は長年、同製錬所が健康や環境に危害を加えているとして閉鎖を訴えてきたことだ。

先住民族の権利に関する国連宣言、世界銀行のセーフガードポリシーや赤道原則といった開発金融における先住民の権利擁護、日本は未批准であるものの国際労働機関(ILO)第169 号条約(独立国における先住民族及び種族民に関する条約)等、先住民の権利擁護はますます重視されるようになっている。今回のウラン鉱等の輸出は、先住民の権利を侵害するものであり、輸出先企業が搬出先の国や州の規則に適合しているから問題ないと、政府の研究開発法人であるJAEAが他人事のように言えるようなものではない。加えて、今回の輸送を担うとみられる双日マシナリー社は、同社グループが掲げる先住民の権利擁護等を謳った人権方針を破ってまで本件事業に加担すべきではない。

JAEAは今回の計画を撤回し、東濃・人形峠の周辺住民の長年の願いである施設廃止と放射性廃棄物の撤去に真摯に向き合うべきだ。原子力の研究開発を長年続けてきた組織として、無責任に、自らの過去の負債を、すでに苦痛を背負う他者に押し付けることは許されない。また、近年、JAEAは海外の原子力プロジェクトへの関与を強めていることから、国際協力銀行、日本貿易保険、日本貿易振興機構、国際協力機構が策定している環境社会配慮ガイドラインをJAEAも策定するべきだ。

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