【原子力資料情報室声明】核のごみの海外輸出は許されない

核のごみの海外輸出は許されない

―日本の原子力研究開発で生じたウラン廃棄物が米ユタ州の先住民の聖地隣接地へ―

2024年6月24日

NPO法人原子力資料情報室

日本原子力研究開発機構(JAEA)は東濃地科学センターと人形峠環境技術センター内で保管してきた国内外産のウラン鉱石およびウランを吸着させたイオン交換樹脂等約136トンを米国唯一のウラン製錬施設であるホワイトメサ製錬所(ユタ州、Energy Fuels社)に輸出する計画を進めてきた。

 米国のGrand Canyon Trustが5月16日にホワイトメサ製錬所を空撮したところ、JAEAのコンテナらしきものが確認できたという。船荷証券を確認すると2024年1月16日に、この積み荷を運んだ貨物船がワシントン州エバレット港に到着していた。[i] JAEAはこの輸送についてこれまで発表を行っていない。

輸出されたウラン鉱石等は、日本のウラン鉱山開発関連の研究開発で出たもので、資源と称しているものの、日本国内では製錬の当てもなく、製錬後も99.5%以上は鉱滓としてホワイトメサ製錬所に保管されることになる。鉱石中に元々含まれていた放射能の約70%は鉱滓に残される[ii]。事実上の放射性廃棄物の海外輸出だ。JAEAの支出額は1億8900万円だった。なお、国立研究開発法人であるJAEAの資金源は国民の税金である。

 ホワイトメサ製錬所はアメリカ先住民の聖地ベアーズ・イヤーズ国定公園に隣接し、また近郊にはユートマウンテンユート先住民のホワイトメサ保留地がある。先住民は同製錬所による被害を訴え、強く反対してきた。

 JAEAは2005年にも人形峠で保管されてきた290㎥(約500トン)のウラン残土を同製錬所に搬出した。今回の輸送同様、資源と称していたものの、輸出されたウラン残土の平均ウラン含有量は0.03%U、含有ウラン量は150kgに過ぎない。結局、置き場に困った放射性物質を米国ホワイトメサ精錬所にお金を払って処分してもらったことになる。JAEAの支出額は6億6000万円だった。

  JAEAは当室が発出した公開質問状への回答で「海外製錬の実施にあたっては、日本国内の関係法令に則ることは勿論のこと、契約先の選定にあたっては、現地における環境社会配慮や法令遵守状況等も考慮したいと考えています」と回答している。だが、先住民への配慮を行った痕跡は見られない。日本の放射性廃棄物をすでに苦しんでいるアメリカ先住民に押し付けることは断じて許されない。JAEAの暴挙に当室は強く抗議する。

以上

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[i]

www.grandcanyontrust.org/blog/japanese-waste-shipped-uranium-mill-near-bears-ears

[ii] www.iaea.org/sites/default/files/publications/magazines/bulletin/bull23-2/23204683335.pdf