ロシア軍のザポリージャ原発攻撃に関するコメント
2022年3月4日
NPO法人原子力資料情報室
3月4日未明(現地時間3月3日夕方ごろ)、ロシア軍がウクライナ南東部に位置するザポリージャ原発を攻撃した。
・状況(3月4日日本時間18時時点)
ザポリージャ原発を保有・管理するウクライナ原子力公社エネルゴアトム、ウクライナ緊急事態庁などの情報によれば現地の状況は以下の通り。
・ザポリージャ原発の6基ある原子炉のうち、稼働中だったのは2・3・4号機。攻撃を受けて2・3号機を停止、現在稼働しているのは4号機のみ。これは攻撃から一番遠い稼働中原子炉だったため。
・2月27日に停止させた1号機に攻撃が当たった。また、訓練棟で火災が発生。現在は鎮火している。
・管理棟および検問所はロシア軍の支配下にある。基本的にサイトはロシア軍の支配下にあるとみられる。
・攻撃によって、原発の守備隊に死傷者が発生した。
・原発の作業員らは現在、原発の管理業務に従事しているものの、疲労している。
・原発から17kmの地点にある空間放射線量モニタリングポストの数値に変化は見られない。
・見解
原発を攻撃することはあってはならない。原子力発電所には大量の核燃料があり、一歩間違えれば大惨事につながる。
ザポリージャ原発は6基の原子炉と使用済み燃料が存在する。総量は2017年時点で2,204トン、そのうち855トンがプール内に、1,349トンが乾式貯蔵施設に保管されている。これらの冷却に支障が出れば、福島第一原発事故のような惨事にもなりかねない。
すでに原発の作業員らは疲弊している。このような緊張下での作業は困難を極めることが予想される。
ロシア軍は極めて危険な行為を行っている。直ちに撤退するべきだ。
また、今回の暴挙で原発が戦争のターゲットとなるリスクが露呈した。ウクライナは原発依存度が高く、このような状況下でも原発を停止できない。安全保障の観点からもエネルギー安全保障の観点からも、原発には持続可能性はない。
以上
・情報アップデート
原子力資料情報室では、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、下記ウェブページを設置しました。ご参照ください。
・原子力資料情報室の関連声明
2月25日 「原発と戦争ーロシアは速やかにウクライナでの軍事作戦を中止するべき」
2月24日、ロシアがウクライナに事実上の宣戦を布告、侵攻を開始しました。ロシアは速やかにウクライナでの軍事作成を中止するべきです。
3月2日 「11年目の忘却 安全文化を放棄した憂うべき原産協会理事長発言」
日本原子力産業協会の新井史朗理事長が、定例記者会見(2月25日)でロシアのウクライナ侵攻と関連して、原発の推進を主張しました。しかしこの発言には、ご都合主義的で人命を軽視した容認しがたい内容が含まれています。