六ヶ所再処理工場アクティブ試験せん断機にトラブル(『通信』より)
六ヶ所再処理工場アクティブ試験せん断機にトラブル
原子力資料情報室通信389号(2006.11.1)より
情報は執筆時点のものです
■アクティブ試験の状況
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験は、第1ステップ(3/31?6/26)の後半で発生した内部被曝事故の再発防止対策のために第2ステップの開始が遅れました。第2ステップは8月18日に使用済み燃料のせん断を開始しましたが、翌19日にはせん断機にトラブルが発生し、その後1ヵ月以上運転を停止していました。9月末に日本原燃が公表した「アクティブ試験の不適合情報」等によると、せん断機内部に固着物が詰まり、従来の方法では除去できず新たな方法を『運転手順書』に追加し、10月2日運転が再開されました。ところが日本原燃はこのトラブルについて一切きちんとした説明を行なわず、トラブルの詳細な状況(固着物とは?どのように詰まったのか?2台あるせん断機のどちらか又は両者か? 新たな方法とはどんなものか?等々)はいまだに分かりません。
第2ステップは全体で約60トンの使用済み燃料を処理し、予定どおりならば約3ヵ月程度10月末までに終了するものです。ところがせん断機のトラブルによる運転停止のため、日本原燃のホームページの情報でも9月末までにPWR燃料6体(約3トン)の使用済み燃料しかせん断されていません。予定の大幅な遅れは確実です。そのため10月2日の再開以降、非常に急ピッチな作業が行なわれている模様です。本格稼働時の工場の1日当りの最大処理量が約4.8トンとされていますが、それと同等の量のせん断が行なわれている日(10/4:約4.5トン)もあります。現在は試験中であり、「処理量は段階的に上げて行くこと、各種試験を行い安全性を確認しながら進める」ことがアクティブ試験の目的ですが、原燃は明らかに遅れを取り戻そうと焦っているようです。
運転停止があったのなら、その分の遅れがあるのは当然です。日本原燃は本来の試験期間を確保して慎重に試験を実施するべきで、その経過もきちんと公表し説明する必要があります。試験内容の消化と日程にばかりにとらわれた試験の進め方は異常です。工場本格稼働のためのスケジュールを優先した試験の進め方では、現場の労働者に過剰な負担をかけ、過度の緊張や疲労、ストレスを与えることになります。これがさらにあらたな事故・トラブルを招くことを私たちは懸念しています。
■迷走する六ヶ所再処理工場の被曝評価
六ヶ所再処理工場は、運転によって気体性の放射能や放射性の廃液を放出・廃棄(放棄)します。これら放射能の人体への影響(被曝評価)は、「年間22マイクロシーベルト(μSv/年)であり安全性に問題ない」、というのが国や事業者の説明です。この「22マイクロ」の根拠が一体どんなものか事業許可申請書を見てみましょう。
工場から捨てられる気体廃棄物は、クリプトン85、炭素14の全量が大気中に、トリチウムはトリチウム水の形でほとんど全量が海洋に捨てられます。その他のキセノン、アルゴンなどの希ガス類、NOx(窒素酸化物)、ヨウ素などの気体性放射能を含む廃ガス類などは、フィルタ等を通した後、高さ150メートルの主排気塔や北排気塔などから大気中に放出されます。液体放射性廃棄物は、各種の抽出廃液、濃縮液、溶媒洗浄廃液、不溶解残渣廃液、アルカリ洗浄廃液、有機溶媒(「廃溶媒」)などで、トリチウム、ヨウ素、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、コバルト、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム等の放射能が含まれます。再処理工場は普通の運転でこれほどの放射能を放出する、まさに放射能垂れ流し工場です。
被曝量(実効線量)「22マイクロ」といっても、膨大な中間段階の仮定・推計を重ねた計算・評価の結果です。つまり「さじ加減」でどのようにもなる計算なのです(本誌385号、小出論文参照)。その事実を示すように日本原燃が今日まで計算した線量評価は、1989年の事業申請時以来いくつもあります。図はそれをまとめたものです。1989年、2001年(7月)、2001年(12月)と数値の上では22マイクロですが、それぞれの放射能が被曝評価に与える影響は、デタラメと言えるほど違います(1996年はなんと20マイクロだった!)。例えば、放射能雲からの外部被曝の影響は大幅に増大してゆく一方、地表沈着の影響は大幅に縮小、海産物からの内部被曝も縮小しています。これは明らかに最初に「22マイクロシーベルト」があり、そこに被曝評価を合わせたに過ぎないとしか理解できないものです。
(澤井正子)