CNICブリーフ「福島第一原発は今も放射性物質を放出している―ALPS処理汚染水放出問題で考慮すべき新たな論点」

ALPS処理汚染水の海洋放出について、トリチウムに着目して、健康影響はない、諸外国の原子力関連施設の放出量と比較して少ない、といった説明が行われています。あたかも福島第一原発からはALPS処理汚染水以外に放射性物質が放出されないかのような説明ですが、実際には、日々、大量の放射性物質が放出されています。そこで現時点の福島第一原発からの放射性物質放出量について、推計を行いました。

概要

ALPS処理汚染水の海洋放出について、トリチウムに着目して、影響はない、諸外国の原子力関連施設の放出量と比較して少ない、といった説明が行われている。しかし、現在、福島第一原発から専用港に漏出している放射性物質は、推計したところ2023年5月現在、セシウム137で70億~96億ベクレル/月、全βでは2,500億Bq~2,900億Bq/月、トリチウムが430億Bq~530億Bq/月に上る。

計画されているALPS処理汚染水の放射性物質放出予定量は、セシウム137で400万Bq/月、全βでは28億Bq/月、トリチウムは1.8兆Bq/月などとされる。トリチウム以外の放射性物質に着目すると、圧倒的に現在漏れ出ている量のほうが多い。たとえばセシウム137に着目すれば、現時点の漏出量は、ALPS処理汚染水に含まれる量の1,750~2,400倍多いことになる。

福島第一原発からはすでにきわめて膨大な放射性物質が放出されており、また、事故から12年経過しても放射性物質が漏洩している現実がある。一方、ALPS処理汚染水は東京電力の管理下にある。管理できない放射性物質放出がある中で、外部への放射性物質放出量を最小化することは福島第一原発の所有者であり、加害企業でもある東京電力の当然の義務である。 福島第一原発からはALPS処理汚染水の放出以外、放射性物質が放出されていないかのような説明は、福島第一原発のおかれた厳しい現状を誤解させることに繋がる。


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