【声明】原子力規制は原子力産業の一部か? 原子力産業セミナーへの原子力規制委員会/原子力規制庁ブース出展への疑問

2023年10月13日
原子力資料情報室

 過日、当室に一本の電話が寄せられた。匿名の大学教員から、「教え子が原子力産業セミナーに参加し、原子力規制委員会・原子力規制庁のブースに立ち寄った。教え子は参考になったとのことだったが、原子力規制委員会の設立趣旨から考えてブース出展はおかしいのではないか」というものだった。原子力産業セミナーはいわゆる新卒者向けの合同企業説明会で、大手電力、原発メーカーなどがブース出展している。2006年から開催されており、今年で18回目となる。

 当室も原子力規制委員会・原子力規制庁がブース出展していることは把握していたが、問題意識を持ってこなかった。しかし、よくよく考えてみると、この指摘はもっともだ。合同企業説明会に省庁がブース出展することを全く否定するものではないが、原子力規制当局が規制対象事業者の開催する合同説明会にブース出展することは、規制と事業者間の関係を考えれば、なれ合いの関係性を生み出しかねない。

 振り返ると、原子力規制委員会の発足前まで、原子力規制に関連する機関で原子力産業セミナーにブース出展していたのは独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)だった。JNESは、経産省の原子力安全・保安院(保安院)が実施していた検査業務の一部、そして、3つの公益法人に委託していた検査や安全解析、調査といった業務を一元的におこなうために2003年に設立された独立行政法人だ。一方、経産省は原子力産業セミナーの後援となっていたものの、規制の本体業務を担っていた保安院はブースを出していなかった。なお、保安院は資源エネルギー庁、つまり国の機関であり、職員は、経産省職員として採用されていた。当時、経産省は原子力規制と推進を両方担当していたことから、推進という観点で後援、一方規制業務を行う保安院がブース出展していなかったことは、理解できるところだ。

 原子力規制委員会・原子力規制庁が発足したのは2012年、一方、その年の原子力産業セミナーには、原子力規制庁の機関としてJNESがブース出展、その後、2014年にJNESが原子力規制庁に統合されてからは、原子力規制委員会・原子力規制庁としてブース出展を行っている。惰性で出展し続けてきたのかもしれないが、原子力規制委員会・原子力規制庁は原子力産業の一部なのだろうか。襟を正すべきだ。


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