六ヶ所再処理工場 燃料取扱装置、チャンネルボックス切断装置に耐震設計ミス発覚 日本原燃は設計ミスを知りながら装置を使用してアクティブ試験を強行

六ヶ所再処理工場
燃料取扱装置、チャンネルボックス切断装置に耐震設計ミス発覚
日本原燃は設計ミスを知りながら装置を使用してアクティブ試験を強行

1万件以上に及ぶ原発や火力発電所等の事故・トラブル隠しが明らかになっていますが、六ヶ所再処理工場でも設計ミスが隠ぺいされていたことが4月18日発覚しました。使用済み燃料貯蔵プールに設置されている第1チャンネルボックス切断装置、燃料取扱装置が地震で破壊される可能性が明らかになりました。日本原燃はアクティブ試験第3ステップはこのまま継続すると公表しています。また耐震安全に重大な欠陥のある燃料取扱装置を今後もそのまま使用する意向を表明しています。

■機器の耐震強度が不足:地震で燃料が破壊される
耐震設計審査指針の改訂に伴う設備の耐震安全性評価(バックチェック)の過程で、使用済み燃料貯蔵プール内の第1チャンネルボックス切断装置、燃料取り扱い装置の耐震設計に重大なミスのあることが判明しました。これら装置の耐震設計において、本来は機器の固有振動数を使う計算で、誤ってその逆数(固有周期)の値を使って計算が行われました。正しい値による再計算によれば、これらの機器の耐震強度は設計基準に満たず、耐震設計で想定されている地震に耐えられないことが明らかになったのです。強い地震が六ヶ所再処理工場を襲えば、機器が倒壊・破壊され、燃料プールや死の灰の塊である使用済み燃料を破壊することになります。

■チャンネルボックス切断装置は、沸騰水型(BWR)燃料の集合体が収納されているチャンネルボックスを、処分のために切断する装置。使用済み燃料は大変強力な放射線を出すため、チャンネルボックスも放射化しています。作業はプールの水の中で行われます。
燃料取扱装置は燃料プールの上に設置されたクレーンで、プールを前後に移動します。プールに燃料を収納したり取出す際、燃料掴み具で燃料の吊り上げ、つり下げに使用される装置です。

■11年も前から確認されていた!
この問題について、設計を担当した日立製作所の下請けの日立エンジニアリング・アンド・サービスの担当者は、すでに11年前の1996年に気づいていたのに公表しなかったとされています。報道によれば、「ミスに気付いて再計算しようとしたが、業務多忙のため、そのまま放置してしまった」と語っています。今までの燃料プールの大規模漏えい事故の際の「総点検」、さらに電力トラブル・事故隠しによる総点検、一体何が点検されたのでしょうか?六ヶ所再処理工場には、公表されていない設計ミス、トラブルがまだまだある可能性があります。

■「第3ステップは終了操作の段階」?
日本原燃はホームページで、「現在実施しているアクティブ試験は第3ステップの終了操作の段階であるため、安全性を確保する観点からそのまま継続し終了することとしたいと考えております。なお、総点検が終了するまでは第4ステップに移行しないことといたします。」として、第3ステップの作業は中止せず終了まで行うと公表しています。
この公表には、事実と異なる部分があります。

■欠陥のある燃料取扱装置を使用して剪断を強行
日立製作所から日本原燃には4月13日に最初の報告がありました。ところが日本原燃がこれら機器の使用を禁止したのは、17日の正式な報告の後なのです。この間六ヶ所再処理工場では、4月8~12日まで使用済み燃料の剪断が行われ、13~14日は剪断は行われませんでした。しかし15日7:00~17:00の間、使用済み燃料の剪断作業が行われました(下記日本原燃WEB図参照)。これはおそらく設計ミスが公表されると第3ステップの剪断作業が中断すると考えた日本原燃が、設計ミスの確認結果を待つことをせず、試験スケジュールを優先させて剪断作業を行ったためと考えられます。日本原燃は、明らかに燃料取扱装置が設計基準を満たしていない欠陥機器であることを知りながら、この装置を使用して使用済み燃料をプールから取出し、剪断作業を強行したのです。「第3ステップの終了操作の段階」なのではなく、日本原燃は無理やり剪断を行い、その後この事実を公表したのです。日本原燃のいう安全確保とは、原燃の都合を優先させることであり、工場の安全や住民の安全確保を意味するものでないことは自明です。

■「現実的な解析モデル」?-地震の影響を値切って計算-
日本原燃は、【評価した結果、「第1チャンネルボックス切断装置」※1、および「燃料取扱装置」※2については、設計用限界地震動に対して、許容応力を満足しないおそれがあること、】を認めています。そのため第1チャンネルボックス切断装置については、耐震強度の不足から耐震工事を実施するとしています。

一方燃料取扱装置については、【ただし、「燃料取扱装置」については、より現実的な解析モデルを用いて計算を行った場合には、設計用限界地震動に対して、許容応力を満足することを確認いたしました。】として、国の確認を受けてそのまま使用すると公表しています。しかしこの再計算の詳細は一切公表されていません。実態は、「想定のする地震のレベルを下げた計算よって耐震性を確認」したものと思われます。このような計算では、六ヶ所再処理工場の施設周辺で起こる可能性のある大地震への耐震安全性が確保されていることにはなりません。日本原燃は「現実的なモデル」や再計算の内容を公表し、その詳細を明らかにするべきです。

■六ヶ所再処理工場周辺の活断層存在
六ヶ所核燃料サイクル施設の近くには、出土西方断層という活断層が存在し、施設の安全性に大きな問題のあることが判明しています。現行の耐震設計でも心配ですが、その耐震基準を満たしていない機器の使用は許されるべきではありません。
(参考記事)
www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070416092435.asp

■アクティブ試験の中断と再度の総点検を!
日本原燃の一連の安全無視の対応は、明らかにアクティブ試験の実施、工場の操業スケジュールを優先したものです。安全を第一に考えるならば、日立から設計ミスの連絡のあった13日以降のアクティブ試験の作業を当然中断するべきでしょう。また3基ある燃料取扱装置も、耐震基準を満たしていないのですから、設計変更、耐震補強工事等を行うべきです。また施設全体の安全性にはまだまだ多くの疑問が残ります。ところが日本原燃の兒島社長は、この事故の青森県への報告において「(今年)十一月の本格操業開始は変更するつもりはない」として、機器類の設計変更や耐震工事での安全確保対策、他の機器類の耐震設計の見直し作業、再発防止策など何も明らかになっていない中で、操業優先の姿勢だけを鮮明にしています。このような日本原燃の体質は、「原発を止めたくない」ために臨界事故や、制御棒脱落事故を隠ぺいし続けてきた電力会社と全く同じものと言えるでしょう。

【関連報道】
■日本原燃「再処理工場(使用済燃料受入れ・貯蔵施設)における第1チャンネルボックス切断装置および燃料取扱装置に関する耐震計算の誤入力について」
www.jnfl.co.jp/press/pressj2007/pr070418-1.html

■日立製作所(該当情報なし)
www.hitachi.co.jp/

■日立エンジニアリング・アンド・サービス(該当情報なし)
www.hitachi-hes.com/index.html

■東奥日報
www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070419085833.asp

■デーリー東北
www.daily-tohoku.co.jp/news/2007/04/19/new0704190902.htm

■河北新報
jyoho.kahoku.co.jp/member/news/2007/04/20070419t23025.htm




『小林晃 写真展-素顔の核燃料再処理工場 The True Face of Nuclear Reprocessing Plants』より(画質は落として掲載させていただきました)
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