六ヶ所&敦賀: 渡辺教授の学会発表傍聴記

六ヶ所+敦賀

「浦底断層(敦賀原発)と六ヶ所の活構造」について
 渡辺教授の学会発表傍聴記
                      澤井正子

■地球惑星科学連合2008大会(in 幕張メッセ)、5月27日(火)開催の「活断層と地震災害軽減」のセッションに参加し、東洋大学の渡辺満久さんのグループの発表を聞いてきました。発表の様子をお伝えします。
 このセッションのテーマは、「活断層やそれに関連して発生する地震を予測し,地震災害の軽減に役立てるには、活断層に関する科学的課題を解決すると同時に、その成果を社会に還元するための具体的施策を実行しなければならない。本セッションでは、理学、工学、人文科学等のさまざまな分野と観点から、活断層に起因する低頻度大規模災害の予測とその対策など、地震災害の軽減のための調査研究のあり方と具体的なアプローチについて議論する」というものです。

地球惑星科学連合2008大会:「活断層と地震災害軽減セッション」
【原発耐震審査でなぜ活断層は見おとされるのか?】
   ?浦底断層の活動性再評価とその意義?
           +
       ー六ヶ所村周辺の活構造ー
渡辺満久(東洋大)・中田高(広工大)・鈴木康弘(名古屋大)

【発表者:渡辺満久】

 活断層の見落としや過小評価がどのように出てくるのか、浦底断層(敦賀原発)を例に検証した。急遽ですが、同じ観点から、再処理工場のある六ヶ所村の活構造についても報告します。……。

傍聴メモの続きは下記アドレスをクリックしてごらんください、(文責は原子力資料情報室)
cnic.jp/files/20080527Q_cnic.pdf

■六ヶ所村の活構造について

 渡辺先生は、六ヶ所の断層問題の主要なポイントは、大きく二つあると指摘しています。一つは再処理工場が土地が折れ曲がるところにあるので、揺れに対する対策、土地がズレることに対する対策を日本原燃が行っているかどうか。土地がズレるというようなことがあるとすれば、耐震設計や耐震構造で対応できるのかどうか。

 さらに再処理工場の安全対策として、耐震評価には断層を最大限に見積もる必要があり、大陸棚外縁断層は当然考慮に入れるべきで、その場合長さだけを見てもM8クラスの地震を想定する必要があります。日本原燃が想定しているM6.9程度では、過小評価となるのではないか。

 特に問題なのは、土地が傾いたり食い違ったりすることにたいして、日本原燃がきちんと対応できていないこと。日本原燃は敷地東側の撓曲(トウキョク:たわみ)を、「バックチェック報告書」でも見逃しているいるので、土地が曲がったりズレたりして再処理工場の建物自体が壊れるという危険性を考慮してないのではないか。日本原燃の調査結果では、断層とか、変動地形を見逃していることが最大の問題と、指摘されています。

  日本原燃はホームページで、今回の渡辺先生のグループの発表について、「科学的根拠に乏しい一方的推論である」と反論しています。先生は、「どこが科学的でないのか、きちんと反論としてほしい。科学的な議論を行いたいし、行う準備がある」とのべています。再処理工場の安心と安全を確保するためにも、真摯な対応と議論が必要というのが、先生の基本的な立場と感じました。

 大陸棚外縁断層は下北半島の沖合い、長さ約85キロメートル、断層崖の高さ約200メートルという大断層です。この断層に関する見解は以前からいろいろありましたが、専門家の間でも見解が分かれています(関連報道参照)。日本原燃や国は12万年前以降この断層には変異がないとしています。しかし東大の故米倉伸之教授は青森県の検討会で、「2万年以降に活動している」とする見解を述べています。渡辺先生は陸上の部分に注目し六ヶ所村で現地調査を行い、12万年前の段丘が40メートルくらいにわたってズレていることを確認しています。そのズレが大陸棚外縁断層の南の延長にあり、大陸棚外縁断層と連続している可能性を指摘しています。現在行われている六ヶ所再処理工場の耐震安全性確認のバックチェクで、当然考慮するべき重大な指摘です。

■原子力資料情報室第65回公開研究会(2008年6月10日)では渡辺先生をお招きし、直接この活断層と六ヶ所再処理工場の関係を解説していただきます。学会発表は約12分という大変短いものでした。たっぷりとお話を伺います。たくさんの皆さまの参加をお待ちしています。
詳細はこちら↓
cnic.jp/653

■関連情報
【地球惑星科学連合大会】
earth.jtbcom.co.jp/session/J237.htm
*「発表概要」原発耐震審査でなぜ活断層は見落とされるのか?‐浦底断層の活動性再評価とその意義(渡辺満久[東洋大]; 中田高[広島工大]; 鈴木康弘[名古屋大])
earth.jtbcom.co.jp/session/pdf/J237/J237-004.pdf

【日本原燃】
「六ヶ所再処理工場の直下に活断層か」などの主張に関する当社の考えについて
www.jnfl.co.jp/event/080528-dislocate.html
耐震安全性評価結果の報告書提出について
www.jnfl.co.jp/press/pressj2007/pr071102-1.html

■ 関連報道
【河北新報】
工場直下に活断層か 六ケ所・核燃再処理施設
www.kahoku.co.jp/news/2008/05/20080525t23009.htm
【東奥日報】
再処理直下活断層を学会で発表
www.toonippo.co.jp/news_too/nto2008/20080528093235.asp
活断層の存在をあらためて否定/原燃社長
www.toonippo.co.jp/news_too/nto2008/20080530104610.asp
東洋大教授の活断層説に原燃反論
www.toonippo.co.jp/news_too/nto2008/20080527092035.asp
【デーリー東北】
再処理工場直下に活断層、渡辺教授学会発表
www.daily-tohoku.co.jp/tiiki_tokuho/kakunen/news/news2008/kn080528c.htm
「活断層ではない」青森県が二度独自検討会
www.daily-tohoku.co.jp/tiiki_tokuho/kakunen/news/news2008/kn080528d.htm
三村知事「国の評価注視」再処理工場活断層問題
www.daily-tohoku.co.jp/tiiki_tokuho/kakunen/news/news2008/kn080531a.htm


2008年6月10日
原子力資料情報室第65回公開研究会
『活断層見逃しの現場をみる ?敦賀原発+六ヶ所村現地調査報告?』

◆報告:渡辺満久(東洋大学教授・変動地形学)

▽チラシをダウンロードできます

詳細はこちら
cnic.jp/653