グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンで被曝事故

グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンで被曝事故

澤井正子(原子力資料情報室)

■神奈川県横須賀市にある原発の燃料製造会社「グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン」で、工場で扱っているウラン化合物が漏れ、清掃作業中の作業員1人がウランによって体内被曝(ひばく)する事故が発生した。

■グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンとは
グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンは、原発の核燃料製造過程の最後にあたる、酸化ウランをペレットに成型、燃料集合体の加工を行う施設である。
主にアメリカから輸入される濃縮(約3?5%)された二酸化ウランから
→ウランペレットの製造→燃料棒→燃料集合体を製造している。
今回の事故は、二酸化ウラン粉末からペレットを製造する工程で起こった。

■グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンの情報によると、
2008年7月9日(水)5:24頃、非密封の二酸化ウランを取り扱う管理区域内の第2加工棟1階第2成型室において、エアモニタの警報が発報した。点検の結果、二酸化ウランペレットを製造するプレス機において、ウラン化合物の漏えいが確認された。当該管理区域内における漏えい量は約9.9かける10の5乗ベクレル(99万ベクレル)と推計されている。飛散したウラン化合物の量は約8グラムで、燃料ペレット1個分に相当する。放射能量は原子炉等規制法の省令が定めた基準の2.7倍だった。

■同工場では、2階から二酸化ウラン粉末を1階に設置してある(燃料ペレットの)プレス機に投下供給する。この装置は二酸化ウラン粉末の濃縮度が変更されるたびに、分解掃除を行う。その後組み立てを行い生産を再開する。今回はこの組み立て作業で、供給配管にある点検口の蓋(直径約10センチ)を閉めないまま作業を再開したため、ウラン粉末が飛散した模様。

■作業員の被曝量は、1.12ミリシーベルト(mSv)だった。
一般人が地球上の日常生活1年で浴びる放射線量が約1ミリシーベルトである。作業員は、1年分の被曝量を一瞬で浴びたことになる。

【グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン】
 http://www.gnfjapan.com/

*今回の事故について(管理区域内でのウランの微量な飛散について)
www.gnfjapan.com/news/images/20080710.pdf

*事業の概要(核燃料の製造、原子燃料サイクルとGNF-Jなど)
www.gnfjapan.com/main/frame_jigyou.html

*グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンは、(株)東芝、(株)日立、アメリカのジェネラル エレクトリック パンパニーが原発の燃料製造のために作った「グローバル ニュークリア フュエル」の子会社。
www.gnfjapan.com/main/frame_kaisha.html

■報告は半日以上の遅れ
二酸化ウラン粉末が飛散する事故が起きたのは7月9日、5:24ごろ。同社は11:55ごろ、同保安院へ飛散事故発生を通報した。 ところが、工場内の飛散状況を精密に測定した結果、報告を義務付ける基準値を超える約8グラムが飛散したことが分かり、原子炉等規制法に基づき飛散量などを同社が保安院に正式報告をしたのは同日21:19だった。(報告の目安値は37万ベクレル )

■原子力安全・保安院は、「本件は、核燃料物質の加工の事業に関する規則第9条の16に基づき報告を受けたもの。現地保安検査官が現場の状況確認を行った。本件について当院は、通報連絡の不備に関し事業者を厳重注意するとともに、今後、法令に基づき事業者が行う原因究明及び再発防止策について報告を求め、さらに、保安検査等を通じて事業者の作業管理状況等について確認する。」としている。

【原子力安全・保安院】
www.meti.go.jp/press/20080710004/20080710004.pdf

◆関連情報

【共同通信】
www.47news.jp/CN/200807/CN2008071001000300.html

【東京新聞】
www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20080711/CK2008071102000128.html