BEYOND NUCLEAR報告書「偽りの約束―原子力推進のウソを撃つ―」翻訳版

BEYOND NUCLEAR報告書「Pandora’s False Promises: busting the pro-nuclear propaganda」の日本語版「偽りの約束―原子力推進のウソを撃つ―」を公開いたします。

本書は、米国で2013年7月に公開されたドキュメンタリー映画「Pandora’s Promise」や、その他数多くある原子力推進プロパガンダの嘘を暴くために、米国の著名な反原発団体BEYOND NUCLEARが作製した報告書「Pandora’s False Promises: busting the pro-nuclear propaganda」の全訳です。

こちらからダウンロード出来ますので、是非ご覧ください。


BEYOND NUCLEAR報告書

偽りの約束―原子力推進のウソを撃つ―

リンダ・ペンツ・ガンター著/岡山文人訳

日本語版発行: 原子力情報資料室


 

概要
❒原子力発電はいかなる炉の構造であっても気候変動に対する効果的な対策になりえない。もし原子力でCO2を大量に吐き続ける化石燃料発電所の相当数を置き換えようとすれば、1ギガワット以上の炉を1000基から1500基も新設しなければならず、それを2050年までに実現するなどまったく無理な計画である。
❒ いわゆる第4世代の炉は、高速炉や小型炉とよばれるものも含めて、斜陽産業の最後のあえぎに過ぎない。高速増殖炉も初期に炉型がいくつか試されていたが、経済面でも安全面でもまったくの失敗だった。原子力発電への資本投下はいつも大幅な予算超過になり、投資家にとってはただの泥沼である。その後の実験炉もコスト高で、経済的に魅力のないものになった。
❒ 一体型高速炉の信奉者はたいへんなコスト高を見逃し、核拡散のリスクを無視し、現実は別の放射性物質に変換するだけなのに放射性廃棄物が無くせるかのように宣伝し、実用化にはまだ数十年かかることを伏せ、しかも冷却材のナトリウムによる火災や爆発の危険から目を背けている。
❒ 原子力発電を使いつづける限り周辺住民への放射線リスクが日常化し、特に子どもでは原子力施設近くに住んでいると白血病の危険が高くなる。原子炉からの定常的な放射性物質放出や事故時の大量放出のために細胞損傷やDNAの変異を生じ、がんやその他の疾病につながる。
❒ 原子力事故後に繰り返される「危険は少ない」タイプの予測は信頼できない。チェルノブイリ健康報告がIAEA/WHOから2005 年に 発表されたが、そこでは科学的精査に耐えないほど死亡率予測を低く見せるために重要なデータが隠蔽されていたことから、報告全体が疑わしいものとなっている。しかも IAEAは原子力推進団体である。放射線被曝のあと、がんが発生するまでの長期間を考えれば、フクシマ災害から生じる健康被害を正確に予測するには早すぎる。しかし健康被害の一端はすでに出現している。
❒ ドイツの実例でも、他に数多くある研究によっても、石炭火力や原子力発電を順次廃止し、再生可能エネルギーへの置き換えが可能である。再生可能エネルギー分野での雇用は数も多いし、継続的でもある。ドイツの場合、再生可能エネルギー分野の雇用はすでに38万人となっているが、原子力分野は3万人でしかない。
❒ CO2を発生させないベース負荷運転は原子力だけが可能という主張は過去のものだ。地熱や洋上風力発電は安定なベース負荷運転が可能だし、原子力よりもCO2のフットプリントがさらに小さい。エネルギー利用の効率化を進めれば原子力や石炭火力の抑制に大きく役立つ。