タニムラボレターNo.020 ビオトープの放射能調査結果 その2
ビオトープ内にキクイモが自生していることを報告したところ、キクイモについて質問をいただきましたので、お答えします。
キクイモはキク科の多年草で北アメリカ原産の外来種です。日本には江戸時代に導入されました。繁殖力が高いのでほぼ全国に定着し、河川敷などで見ることができます。茎は細長く、夏から秋に黄色い花を咲かせ、冬にコブ状のイモ(地下茎)が実ります。イモの見た目は生姜に似ていて、そのまま食べることができますが健康食品など加工品での流通が多いようです。
今号ではビオトープで育ったキクイモの放射性セシウム濃度を中心に報告します。
キクイモが育った土壌は、表面6センチメートルまでの放射性セシウム濃度(セシウム137と134の合計値)が1キログラムあたり約660ベクレル、6から12センチメートルのまで土壌は40ベクレル、それより深い層は不検出でした(セシウム-137における検出限界は6ベクレル)。
キクイモは流水でよく洗った後、①キクイモの実全体、②皮をむいた状態、③皮だけの状態、この3つの状態で測定を行いました。①キクイモの実全体は放射能測定器の最大容器を満たすために1.8リットルぶんを準備しました。そこから②の皮をむいた状態にすると体積が減って1.0リットル容器での測定となり、③の皮だけは350ミリリットル容器で測定を行いました。測定はすべて24時間おこないました。
放射性セシウム濃度を測定した結果、①キクイモ全体で1キログラムあたり2.1±0.5ベクレル、②皮をむいた状態で1.6±0.6ベクレル、③皮だけの場合は7±3.1ベクレルという値を得ました。とても低い値です。
不確かさ*1を考慮すると、①(1.6~2.7ベクレル)と②(1.0~2.2ベクレル)の範囲が重なりますから、①と②のどちらの方がより汚染されているとは言えません。一方、③(皮だけ)の場合は①②より放射性セシウム濃度が高いことがより確からしい。よって、キクイモの場合は実より皮の方に放射性セシウムが多く含まれているといえます*2。
土壌から可食部へのセシウム移動の観点から移行係数を算出すると0.003となりました。
(谷村暢子)
*1放射性物質濃度の不確かさは3シグマをとっています。①を例にあげて説明すると、キクイモ全体のセシウム濃度は2.1ベクレル/kgとは決定できず、その値から±0.5ベクレルまで拡張した範囲(1.6~2.7)のどこかに真の値がある確率が高い。その確率は99.73%だという意味です。
*2土を完全に除去できていない場合は、土壌に含まれるセシウムの影響も考えられます。