第11回放射性廃棄物WG意見書
第11回放射性廃棄物WG意見書
2014.4.30
伴英幸
1. 審議のやりなおし
寄せられた 122 件のコメントを拝見して、第一に感じたことは、この委員会の審議をやり直すことが求められている、ということでした。中間報告案への批判が圧倒的で、受け入れられていないことが明らかになりました。WGの中間とりまとめ案が社会的合意の必要性を訴え、「人々の声に真摯に耳を傾け」「真摯に議論を尽くし」ていくことを強調しているのですから、まず WG がその実践を行わなければ信頼回復の端緒につくことすらできません。寄せられた意見に対してこのまま拙速かつお座なりな対応で中間取りまとめを行うことは、委員として了解できません。
2. 増田寛也委員の委員長職について
同氏がこのたび東京電力の社外取締役という重責につかれるとのこと報道で知りましたが、同時に意見の中に「利益相反」につながるとの声も数件ありました。審議のやり直しを、今の体制で進めることは、かえって不信を増幅することになりかねません。いただいたこの意見を尊重すべきだと考えます。
3. 審議会のあり方
意見からは、地層処分への取組を進める、という結論へ導くために審議が行われたと受け取っている人が多いようです。一般に、役所が導く結論の方向性をおおむね決めて人選をすすめるこれまでのやり方が不信感の根源にあるように受け取れます。「民主主義の原理に則って、住民、電力会社、自治体関係者、専門家などの利害関係者間で、議論を尽くして合意形成をおこなう」(日本学術会議『回答高レベル放射性廃棄物の処分について』)場を審議会とするのが良いと考えます。また、委員の中から事務局を選任して運営していく方向を検討するべきだと考えています。
4. 寄せられた意見の半数の60件が、放射性廃棄物をこれ以上作らないことを訴えていることを「真摯に受け止める」べきだと考えます。廃棄物 WG では原子力政策問題を基本政策委員会での議論と割り切りましたが、これが受け入れられていないことがはっきりしました。放射性廃棄物問題の解決には、放射性廃棄物の発生量の上限を現状で確定することが必要だと、「中間とりまとめ」の中に書き込むべきだと考えます。これを基本政策分科会にあげても問題はないと思っています。
5. 審議中から、日本学術会議の「回答」にある提言を尊重するべきとの意見が寄せられていました。寄せられた意見にも提言に触れています。中間とりまとめ案は、学術会議回答と原子力委員会見解を「等」でくくり、実質的に原子力委員会の見解にそったとりまとめになっています。改めて、学術会議の提言をもとに議論(転倒した手続き、自立した科学者集団による開かれた討議の場の確保、専門的で独立性を備えた総量管理、暫定保管、負担の公平性、多段階合意形成の手続き、など)を深めるべきと考えます。
さらに、以下の諸点もさらに詰めた議論をするべき点だと考えます。
6. 現世代の責任との表現に違和感をもったとの意見も多くありました。原子力を開発してきた世代と生まれたときから原発が存在していた世代を同じ「現世代」とくくり、責任があるから最終処分に取り組むべきとの意見は責任転嫁だとする意見、あるいは現世代の責任はわかるがそうなってしまった原因を WG はしっかり議論すべきといった意見です。責任では、電気事業者と国の責任を問う意見も多くみられました。
現世代の定義を書き込むべきで、それを曖昧にしていることが問題なのではないかと思います。これまでの現世代の定義からすれば、例えば、向こう 60年間は暫定保管を継続し、その間に社会的合意形成と天然バリアおよび人工バリアの調査研究を深める(瑞浪や幌延は協定に従い研究を終了する)ととりまとめても、将来世代へ先送りすることにはならず現世代の取り組みとなります。
7. 可逆性・回収可能性について
言及したのは一歩前進としたうえで「可逆性については、それを担保するための社会的システムが不明確である。従来、日本の政策は、核燃料サイクルにおける使用済み燃料の再処理計画に代表されるように、上手く行かなくなっても後戻りできないことが通例であった。そのような状況において、よほど制度的な担保がなければ、可逆性に対する信頼性を確保することはできない。」と鋭い指摘がありました。これに答えるには、やはり制度化すると明記すべきと考えます。また、回収可能性についてより限定した書き方にしないと容易に可能との誤解を受けるとの指摘はその通りと受け止めます。これらの言葉が調査受け入れを容易にするための方便であってはなりません。
第 10 回の会合の後のやり取りで、明確化とは基本方針と最終処分計画に明記するとの意味だと事務局の説明を受け、中間とりまとめ案としてパブコメに諮ることを了解しましたが、こうして意見が出てくると、改めてより踏み込んだ書き方をしないと絵に描いた餅になり信頼が得られないと考えます。
8. 住民投票制度
これについて制度化するべきとの意見も出されています。住民参画ではなお弱く、住民による自己決定権としてきちんと位置づけるべきとの意見で、私は前から主張しているので、意を強くしているところです。
9. 第 3者機関の設置
原子力委員会が第 3 者機関としての資格がないとの意見も出ています。改正法によっても、また、原子力委員長の基本方針をまとめるとしているとしている立場からは、同委員会を第 3者機関として位置付けられないでしょう。
その上で、この機関の設置は重要で、急がれるでしょう。より深堀した議論をすすめ、より明瞭に書き込むべきだと考えます。
以下、項目だけ列記します。
10. 関係閣僚会議との関係
11. 廃棄物技術WG の人選問題
12. 当 WGの客観性(第 3者評価をどう受けるか)