『原子力資料情報室通信』403号(2008/1/1)短信

『原子力資料情報室通信』403号(2008/1/1)短信より

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■六ヶ所再処理工場 ガラス固化建屋でトラブル

 六ヶ所再処理工場のガラス固化建屋で、11月17日、24日と続けて同様の機器でトラブルが発生した。ガラス固化体容器のふたを溶接する溶接機は2台あるが、ふた押さえユニットのガイドシャフトが続けて外れたため、建屋の運転が停止した。
 日本原燃は、はずれた部品を交換し、12月4日施設の運転を再開した。運転停止していた間、建屋内には高温の高レベルガラス溶液を充填し、ふたの溶接されていないガラス固化体が5本そのまま残されていた。このような状態での耐震安全性については、国の審査は行なわれていない。

■トリチウムの放射線影響に関する見直し

 イギリス健康保護局(Health Protection Agency)
は、07年11月29日にトリチウムのリスクを再検討した報告を発表した。この見直しは同局より委託された電離放射線に関する独立アドバイザーグループがまとめたもので、グループの代表はサセックス大学のB.A.ブリッジ教授が務めている。
 報告書はトリチウムの放射線荷重係数(WR)を従来の1から2に引き上げることを提言した。国際放射線防護委員会(ICRP)の現行基準ではベータ線の荷重係数は1で統一している。同報告書はICRPのこの基本的考えを承認しながらも、トリチウムに関しては変更を提言している。
 トリチウムの放射線影響に関してさまざまな角度から見直しているが、最も強い根拠となったのがトリチウムの体内での滞留時間のようだ。環境中のトリチウムは大部分が水の形(HTO)で存在するが、一部は有機体と結びつく(OBT)。この有機結合トリチウムの生物的半減期は平均40日とHTOの1週間程度より長い。ICRPが評価しているのはこの二つだが、加えてOBTの一部(炭素結合OBT)はさらに長く体内に留まり、この生物的半減期は1年を越えるものがあるという結論に達した。
 被曝線量はある組織あるいは臓器の吸収線量に放射線荷重係数を掛けて導き出される。そこで上記のOBTを考慮に入れて放射線荷重係数を2にすることを提案しているのである。
 なお、この考えは今までもICRP内部にあったが基準として採用されてこなかった。今回、イギリスがこの考えを支持する結論を出したことで将来はICRPでも変更するかもしれない。

■原発周辺で白血病発症率2倍超

 ドイツ連邦放射線防護庁は、原発周辺に住む子どもたちは白血病やがんにかかる割合が高いとする調査結果をまとめた。1980~2003年まで、ドイツ国内16ヵ所の原発から5キロ以内の住民を調査した結果、白血病にかかった5歳未満の子どもは37人で、同じ人口にあてはめた全国平均17人の2倍以上に達した。小児がんの発症率も全国平均48人のところ77人だった。同庁は、「放射線と発症との因果関係は認められない」が、原因についてさらなる調査が必要としている(詳報は次号以降で)。