東海再処理工場の廃止決定、 六ヶ所再処理工場のさらなる稼働延期

『原子力資料情報室通信』第485号(2014/11/1)より

東海再処理工場廃止

 9月29日、東海再処理工場の事実上の廃止が日本原子力研究開発機構の改革検証委員会で報告された。もちろん、再処理や核燃料サイクル政策が放棄されたわけではない。理由は、同工場を新規制基準に適合させるには1,000億円もの費用が必要となるためである。 工場はすでに2003年で電気事業者との再処理役務を終了しており、残りは「ふげん」の使用済みMOX燃料等約110トン(工場の貯蔵量は約40トン)のみとなっていた。廃止されるのは、使用済み燃料せん断・溶解等の設備で、2017年以降に廃止措置計画を申請する。ふげんの使用済み燃料についてフランスへの委託再処理の方針とされているが、必要性はまったくない。

図1 東海再処理施設の処理実績(2012年12月31日現在)

 同工場内には、プルトニウム溶液約3.5立方メートルと高レベル放射性廃液約430立方メートルも貯蔵されている。原子力規制委員会は、工場の廃止措置を先取りする形で今年4月、適合審査合格前から脱硝装置やガラス固化施設の運転を認める異例の措置を取っている。今後、プルトニウム溶液のMOX粉末化(640キロ)に約2年、高レベル廃液の固化(630本)には約20年が必要とされている。

東海再処理工場の実績

図2 東海再処理施設総事業費

 東海再処理工場は1971年に着工した。当初計画は年間処理能力210トン。1974年に竣工したが、使用前検査合格証取得は80年12月で、この間度重なる事故・トラブルに見舞われ、81年1月の本格操業開始時には処理能力を140トンと大幅にダウンさせた。97年には低レベル廃棄物アスファルト固化処理施設で火災・爆発事故を起こし、3年間運転を休止している。
 同工場は約31年間で1,140トンの使用済み燃料を再処理した(図1参照)。年間平均約40トンにも及ばない“実績”で、工場建設の目的であった再処理技術開発→第2再処理工場(六ヶ所工場)への技術移転は事実上頓挫し、ウラン・プルトニウム混合脱硝とガラス固化技術の開発が行われたにすぎない。しかしそのガラス固化技術が六ヶ所再処理工場の稼働を遅延させており、失敗と評価されても仕方ないだろう。

東海再処理工場関連事項

東海再処理のコスト

 使用済み燃料1,140 トンの再処理に費やされた費用を図2に示す。再処理工場の総事業費は7,734億円で、この他にガラス固化施設の総事業費が1,166億円ある。両者とも施設の建設費より運転費用が膨大で、工場がもっと稼働率を上げていたらさらに高騰していただろう。これらの費用を賄ったのは「事業収入」、いわゆる再処理役務の代金でその原資は電気料金だ。一方の政府支出とは税金のことで、結局すべて国民が負担している。これらを単純に計算すると、使用済燃料1トン当たりの再処理費用は約8億円に達する。私たちは東海再処理工場にこんなに投資させられてきた。しかもこれだけでは済まない。約50年とされる再処理施設の解体・廃止、廃棄物対策、ガラス固化施設約20年間の運転、ガラス固化体貯蔵施設増設、3号溶融炉増設・解体等の費用が最低限必要となる。事実上の官営再処理の収支計算は、最終的にトン当たり9~10億円となる可能性もある。

六ヶ所再処理工場の更なる稼働延期

 東海再処理工場がクリアできなかった新規制基準による六ヶ所再処理工場の審査が続いている。しかし過酷事故の想定、敷地周辺の断層評価・再

調査、書類不備等のため、審査の行方は不透明で、「2014年10月」の完工は事実上不可能だ。本『通信』が発送されるころ、六ヶ所再処理工場の22回目の稼働延期、新期日「2016年3月」が公表されるだろう。また「貯蔵した使用済燃料は六ヶ所再処理工場へ搬出する」と地元で一貫して説明してきたむつ市の「リサイクル燃料貯蔵(PFS)」も、六ヶ所工場の稼働延長と同様に操業開始を延期する。  

(澤井正子)

*図1、2:日本原子力研究開発機構・核燃料サイクル工学研究所・再処理技術開発センターのWEB(http://www.jaea.go.jp/04/ztokai/summary/center/saihori/)所収の資料をもとに原子力資料情報室作成

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