タニムラボレター No.031 2014年の水産物放射性セシウム検査結果

 『原子力資料情報室通信』第490号(2015/4/1)より

 

 前回は農産物の放射性セシウム検査結果について報告しましたが、今回は水産物についてまとめます。データは厚生労働省のHPで公開されているものを対象としました。
 2014年1月から12月までの水産物における放射性セシウムの検査数、その検出数、25ベクレル/kg以上の数(検出下限値が25の測定があるため)、100 ベクレル/kgを超える数を記載しました(表)。
 月あたりの検査数は農産物の6割ほどで、その内100ベクレル/kg を超えた割合は0.1~1.1%でした。基準値を超えた魚種は、クロダイ、シロメバル、イシガレイ、スズキ、イワナ、ヤマメなど。海の底魚(シロメバル、イシガレイ)、淡水魚(イワナ、ヤマメ)、淡水と海水の両方で生息できる魚(クロダイ、スズキ)に放射性セシウムが多く蓄積される傾向があります。基準値を超えた水産物の採取地は、宮城、福島、茨城、千葉、栃木、群馬であり、福島第一原発と隣接していない県も含まれています1)
 原発事故から4年が経過し、放射性物質が検出される水産物の種類は変化しています。
 2011年の事故直後はカタクチイワシ(コウナゴ)など、海の表層に生息する魚から高濃度の放射性セシウムが検出されていました。その後、表層の魚に含まれる放射能は減少し、2014年になってからは10ベクレル以上の検出はされていません。それに対して、底魚と淡水魚は放射性セシウム濃度の減衰はゆるやかです(グラフ)。
 底魚に含まれる放射能と関係すると考えられる海底土の放射能汚染には偏りがあり、海底地形に段差のある箇所から、他の箇所よりも高濃度の放射性セシウムが検出されています2)。海底の調査は大がかりで困難なため、汚染状況が十分に把握されていないのが現状です。また、淡水魚は体内の塩類を保持しようとする機能が働くので、一度体内に取り入れた放射性セシウムも排出しにくいと言われています。         

 (谷村暢子)

 

 

グラフ:放射性セシウム濃度の推移(水産庁【水産物の放射性物質調査について】による)
表:2014年の水産物の放射性セシウム検査結果(厚生労働省公表による)

1)検査対象自治体  海産魚種:青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉  内水面魚種:岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、神奈川、新潟

2)原子力規制庁委託事業平成25年度放射性物質測定委託費(海域における放射性物質の分布状況の  把握等に関する調査研究事業)による