【原子力資料情報室声明】地層処分ありきでは問題は解決しない

NPO法人原子力資料情報室と当室を含む6団体は、高レベル放射性廃棄物最終処分地の選定に向けた「科学的特性マップ」が最終処分関係閣僚会議で決定され、経済産業省から公表された件を受けて、下記の声明を発表しました。
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【原子力資料情報室声明】地層処分ありきでは問題は解決しない
2017年7月28日
NPO法人 原子力資料情報室
共同代表 山口幸夫、西尾漠、伴英幸
 本日、高レベル放射性廃棄物最終処分地の選定に向けた「科学的特性マップ」が最終処分関係閣僚会議で決定され、経済産業省から公表された(http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/)。マップは4色に色分けされ、オレンジとシルバーは「好ましくない特性があると推定される」地域であり、グリーンのところが「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域とされている。グリーンのうち、沿岸から20㎞の範囲(グリーン沿岸部)は「輸送面でも好ましい」地域として、濃いグリーンに色分けされている。
政府はこの公表は「処分地域を特定するものではなく」、「処分の実現に向けた長い道のりの最初の一歩」としている。このマップを示した後、政府は全国規模の理解活動をこれまで同様に進め、処分地選定と処分実施を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は「グリーン沿岸部」を中心とした「重点的な対話活動」を展開するとしている。実際には、交付金と「国策」の力によって「理解」の強要が行なわれることだろう。
政府やNUMOの姿勢は、高レベル放射性廃棄物を地層処分することを既定の方針として固執するもので、きわめて強い疑問がある。これまで誰も受け入れてこなかった厄介な廃棄物であるからこそ、発生源である原発政策そのものに立ち返って議論を進めるべきではないか。また、現行の地層処分計画は、いずれ放射能が環境に漏れ出て、将来世代に負の影響を与えることが懸念される。拙速に地層処分ありきで進めるのではなく、当面は管理を続けながら、よりよい方法を模索することも含めて議論をするべきであろう。
ともあれ今回のマップの公表は、現行の再稼働ありきの原子力政策や安易な地層処分に反対の声を上げる良い機会を提供したと私たちは考えている。
以上
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高レベル放射性廃棄物処分場「適地マップ」公表に当たって
 本日、最終処分関係閣僚会議の確認を経て「科学的特性マップ」が公表された。
これは、これまでトイレ無きマンションと揶揄されるほど後回しにされ、めどが立っていない高レベル放射性廃棄物処分場の立地を進めるために、有望地を示したものだ。有望地とされることへの反発に配慮し、「表現を適切に見直し」た結果、分かりにくくされているが、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」が「適性がある」、「輸送面でも好ましい」が「より適性が高い」地域に相当する。
国は「『有望地』に『選定』されれば、調査や処分施設が押し付けられてしまうのではないかというのは典型的な誤解に基づく懸念で、マップの提示は調査の受け入れについて自治体に何らかの判断をお願いするものではない」としているが、処分主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)はマップが示されたら「より適性が高い地域」で重点的な対話活動を展開していくとしている。「より適性が高い地域」で地層処分受入れ派が多数になったと見なされれば、国の立地調査申し入れが行われるだろう。
高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性は確認されていない。地震列島で地層処分すれば、漏れだした放射能は地下水を汚染し、やがては地上へと到達するであろう。一度環境を汚染してしまえば、除染がいかに困難かは福島の現実が教えてくれている。日本学術会議は2012年に、科学・技術的能力の限界の認識や、暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築を提言している。国民的合意がないまま原発再稼働を急ぎ、処分困難な高レベル放射性廃棄物をさらに生み出しながら、地層処分の必要性を説かれても、誰も納得しないであろう。
適地提示を機に、これまで原子力と縁のなかった地でも、行き場のない核のごみの矛盾が広く知られることになり、より大きな脱原発のうねりが生まれることだろう。私たちは、破たんしている原子力政策を根本から見直すことを訴え続けていく。
2017年7月28日
原子力資料情報室、原水爆禁止日本国民会議/フォーラム平和・人権・環境、さよなら原発1千万人アクション、核のごみキャンペーン関西、反原発運動全国連絡会、どうする!原発のゴミ・全国交流会岡山県実行委員会
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経済産業省・資源エネルギー庁 科学的特性マップ公表用サイト

www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/

原子力発電環境整備機構(NUMO) 「科学的特性マップ」サイト