美浜3号機の破断した配管が未点検であることを、関西電力が事故の1ヶ月前には知っていたという新聞報道に関連した質問書

⇒美浜3号配管事故に関する保安院・関電のシナリオは「7月中旬に未検査を認識し放置を指示」報道と両立するのか(2007年1月)

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2005/11/10追記:

この質問書に対する保安院からの回答は長引いていたが、2005年11月8日に保安院からの口頭回答があった。それによると、保安院の把握している時系列は以下の通りである。

(2004年7月はじめ……大飯1号で減肉を確認)
・7月23日……関西電力本店から若狭支社に指示文書を発出
・7月30日……若狭支社から各発電所サイトに指示文書を発出
・8月3~4日ころ……追加点検すべき箇所を抽出・集計中に美浜3号の事故箇所の未検査を認識
(8月9日……事故)
・8月10日……三菱からリスト漏れの経緯を関電に伝達

関西電力の報告書(2005/3/1)では、「平成16年7月の大飯1号機のその他部位(主給水管)減肉トラブルを受け、若狭支社は、その他部位も含め次回定期検査で追加点検すべき箇所を抽出するよう各発電所に指示した。美浜発電所は、この指示を受け、点検リストのチェック作業を進める中で、未点検箇所の一部として当該部位を抽出したが、既に次回定期検査において点検する計画であったことを確認した。」とされていたが、具体的な日付を含む時系列は開示されていなかった。

一方、読売新聞(2005/8/10)は、「県警が同発電所の捜索で押収した資料などから、調査過程で、同発電所機械保修課の複数職員が遅くても7月中旬には、運転開始以来、配管が一度も点検されていなかったことに気づいていたことがわかった。」としており、上記の時系列よりも早い。

「日本アームは「過去の点検データなどに基づいて未点検場所はそれぞれが把握しており、現場担当者レベルでは、破損場所が未点検であることは分かっていたはずだ」としている」(共同通信2004.8.10)という報道と照らし合わせても、現場レベル(美浜発電所機械保修課など)では未点検が現場知として認識されていた可能性がある。

また、美浜サイトを含む関西電力の各サイトからは日本アームの管理システムNIPSにアクセス可能であった(事故調)。

若狭支社から各発電所サイトに指示文書を発出したという7月30日は金曜日であり、翌週前半には、照合作業そして集計作業のなかで未点検が確認されていたとすればきわめて迅速である。公式な指示文書のルート以外に現場の認識が存在していてもおかしくない。

「「日本アーム」(本社・大阪市)が昨年11月、破損個所が同様の原発では交換・補修されているのに、これまで点検されていなかったため同発電所の機械保修課の担当者に点検を提案した。この時に同発電所担当者は初めて検査漏れに気付いた。担当者は、破損個所の前後にある配管曲折部と、同じ構造の美浜2号機にある同様配管の摩耗が少ないなどを理由に、破損配管部分も「大丈夫だろう」と漠然と判断したという。」(読売新聞2004/8/10/)という初期報道もきわめて具体的であり、上記の時系列よりさらに早い。

「事故箇所の余寿命計算の有無と時期」については依然として確証がない。事故を未然に防げた可能性との関連で、未検査がどのレベルでどの時期に認識されたか、余寿命評価がなされたかはきわめて重要であるが、事故調査委員会はそもそも調査上の論点として明示することもしなかった。

関連して、当の破断箇所の取替え配管を受注した三菱重工(高砂)が、配管の仮接続を誤ったばかりか製造番号を削って隠蔽していたことが判明した(関電はこの問題を2月には認識していた)。

美浜3号事故の霧はまだ晴れていない。

参考-美浜の会によるまとめ
www.jca.apc.org/mihama/mihama3/hoanin_hearing051108.htm

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美浜3号機の破断した配管が未点検であることを、
関西電力が事故の1ヶ月前には知っていた
という新聞報道に関連した質問書

原子力安全・保安院長 松永和夫様

2005年8月17日

 8月10日付の読売新聞朝刊は、福井県警捜査本部の調べで明らかになったこととして、美浜事故の直接原因に係る重要な事実を報じています。美浜3号機の破断した配管が28年間一度も点検されていなかったことについて、関西電力は事故の1ヶ月前、遅くとも昨年7月中旬には把握していたと報道されています。記事によれば、昨年7月、大飯1号機の主給水系配管で大幅な減肉が見つかり、その水平展開として他の原発の点検を行った過程で、美浜3号機の破断した配管が一度も点検されていなかったことを関西電力は知ったとのことです。

 他方関西電力は、今年3月1日に報告書「二次系配管破損事故について」を貴院にも提出しました。その中では、「平成16年7月の大飯1号機のその他部位(主給水管)減肉トラブルを受け、若狭支社は、その他部位も含めて次回定期検査で追加点検すべき箇所を抽出するよう各発電所に指示した。美浜発電所は、この指示を受け、点検リストのチェック作業を進める中で、未点検箇所の一部として当該部位を抽出したが、既に次回定期検査において点検する計画であったことを確認した」(26頁)と書かれています。

 その後3月30日に貴院は、「関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)」をまとめました。しかし、「最終報告書」では、上記の関電報告書の内容についてはふれられていないばかりか、関西電力が、いつ当該配管が未点検であったと確認したのかについても書かれていません。

 この大飯1号の主給水管のその他部位での大幅な減肉は、美浜3号機事故の予兆であり警告そのものでした。そのため私たちは、3月18日の貴院との交渉でもこの問題を質問していました。しかし貴院の担当者は、「事故直前に未点検だと分かったと聞いている」、あるいは「関電がリスト漏れを知ったのは事故後ではないか」等のあやふやな回答でした。そのため、今回改めて質問します。

質問事項

1.関西電力が美浜3号機の当該配管が未点検だと確認した時期について、貴院が「最終報告書」をまとめた段階で、
 (1)貴院はいつだと判断したのですか。
 (2)その判断の根拠は何ですか。
 (3)この件について、最終報告書に何も書かなかったのはなぜですか。

2.大飯1号機の減肉問題の水平展開から、美浜3号機の当該配管が未点検であることを確認したという上記の関西電力の報告書の内容について、
 (1)貴院が関電から聞き取りした内容を具体的に明らかにしてください。

3.8月10日付読売新聞の報道以降、この件に関して、
 (1)関西電力から聞き取りした内容を明らかにしてください。
 (2)10日以降、何も聞き取りをしていない場合は、その理由を示してください。

4.貴院は2004年7月27日発表「関西電力株式会社大飯発電所1号機の定期検査中に発見された主給水配管の減肉の原因と対策に係る関西電力株式会社からの報告及び検討結果について」において、「当院として、関西電力(株)から提出された報告書について検討した結果、報告対象となる厚さに至る減肉が発生した原因の推定とその背景にある保守管理上の不適切な部分の分析、及びこれらに対する対策は首肯できるものと考える。また、関西電力(株)が今回の事象を踏まえ、保守管理に係るシステムについても点検を行うこととしていることを踏まえ、当院としては、保安検査等の機会を通じ、関西電力(株)の保守管理活動に関する取組み状況を適宜確認していくこととする。」としました。「保守管理上の不適切な部分の分析、及びこれらに対する対策」や「取組み状況」に関して貴院は関西電力と情報を共有していたと思われます。水平展開の実情についても把握していたのではないですか。

5.事故直後の報道では、大飯1号減肉よりも前から関西電力は事故箇所の未検査を認識していたとされていました。貴院としてはその問題についてどのような調査を行ない、どう認識していますか。

質問に対する回答は、2週間以内に文書でお願いします。

2005年8月17日
■団体名(五十音順)
・核のごみキャンペーン・中部
・柏崎原発反対地元三団体
・原子力資料情報室
・原子力発電を考える石巻市民の会
・東京電力と共に脱原発をめざす会
・福島老朽原発を考える会
・浜岡原発を考える静岡ネットワーク
・福島原発市民事故調査委員会
・美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

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『原子力資料情報室通信』375号短信

 昨年8月9日の関西電力美浜3号事故から1年が経過した。8月10日の読売新聞は福井県警の捜査情報として、関電が事故のほぼ1ヶ月前から、破断箇所が未検査であることを知っていたと報じた。それによると美浜発電所の「機械保修課の複数職員が遅くても7月中旬には」破断箇所の未検査を認識していたという。
 関電は大飯1号の定期検査で昨年7月1~5日、2次系主給水配管が必要肉厚未満に減肉しているのを発見。今年3月1日に関電が保安院に提出した報告書では「平成16年7月の大飯1号機のその他部位(主給水管)減肉トラブルを受け、若狭支社は、その他部位も含めて次回定期検査で追加点検すべき箇所を抽出するよう各発電所に指示した。美浜発電所は、この指示を受け、点検リストのチェック作業を進める中で、未点検箇所の一部として当該部位を抽出したが、既に次回定期検査において点検する計画であったことを確認した」としており、具体的には7月30日に若狭支社から指示文書が出て、未点検に気づいたとしていた。
 ところが読売記事によると、大飯1号で減肉を確認した「直後に」美浜サイトでも未点検箇所の調査を開始し、7月中旬には破断箇所の未点検を認識したという。理由もなく27年間未点検であるはずはなく、それがリスト漏れによる未点検であることも分かったはずである。もとより事故直後の報道では、大飯1号減肉をまつまでもなく、日本アームは2003年4月にはリスト漏れに気づき、同年11月には美浜発電所(機械保修課)に知らせたことになっていた。同じ美浜発電所の1号機ではリスト漏れだった箇所を2002年に点検している。大飯1号減肉以前の経緯も捜査対象となるべきであるが、未点検の経緯についてそもそも調査を放棄していたに等しい保安院・事故調のあり方も問われねばならない。