MOX燃料はおいくら? 

『原子力資料情報室通信』第564号(2021/6/1)より

プルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料。いろいろな加工をするので、高くなるはずですが、一体いくらなのでしょうか。試算してみました。

1.貿易統計からの試算
かつて日本は使用済み燃料を海外で再処理していました。そこで取り出されたプルトニウムがMOX燃料になって帰ってきています。貿易統計には輸入品目ごとに輸入元、輸入量と輸入価格が載っているので、これを調べると、輸入したMOX燃料の価格がわかります(表)。たとえば、2017年にフランスから舞鶴税関に10,576kgのMOX燃料が着きました。価格は160.9億円、1kg当り152万円です。2013年には米国から40,529kgのウラン燃料が到着しています。価格は61.7億円、1kg当り15.2万円です。為替の問題もありますが、ちょうど10倍になります。1999年からの推移をみると、輸入MOX燃料は輸入ウラン燃料の約9倍だったことがわかります。

2.使用済燃料再処理機構の単価を使った試算

使用済み燃料の再処理を実施するために設立された認可法人使用済燃料再処理機構は毎年、発生する使用済み燃料当りの拠出金単価を発表しています。再処理の単価は584円/gで一律ですが、MOX加工は89~103円/gと使用済み燃料を発生させた会社ごとにばらついています。この値を用いて試算してみました。
拠出金単価は再処理単価584円/g、MOX加工単価は間をとって96円/g、合計で680円/gとします。一方、現在の経産省の説明では、使用済み燃料を800トン再処理した場合6.6トンのプルトニウムが分離されます。使用済み燃料のプルトニウム含有率は0.8%ということになります。
原子炉の形によっても変わりますが、MOX燃料のプルトニウム含有率は5~9%程度となっています。1kgのMOX燃料には50~90gのプルトニウムが含まれているということです。一方、使用済み燃料のプルトニウム含有率が0.8%の場合、1kgの使用済み燃料に含まれるプルトニウムは8gです。MOX燃料のプルトニウム含有率を、間をとって7%と置いた場合、MOX燃料1kgに必要なプルトニウムを取り出すには、使用済み燃料8.75kgが必要となります。これを前提にすると、拠出金単価680円/g×8.75=5,950円/g、トン当たり59.5億円。政府資料などではウラン燃料1トンは約2~3億円とされているので、ウラン燃料比で約20~30倍です。
MOX燃料はプルトニウムを使うことでウラン資源を10%削減できるといいます。でもMOX燃料は通常のウラン燃料の10~20倍もします。上の計算だと3,000万円減らすのに、60億円支払っていることになります。改めていったい何のために再処理をするのかが問われます。

(松久保 肇)