【原子力資料情報室声明】四国電力は伊方原発3号機を廃炉にして、脱原発電力の先駆者になるべきだ

2021年12月2日

NPO法人 原子力資料情報室

 四国電力は伊方発電所3号機(出力89万kW)を12月2日に再稼働すると発表した。私達は、この再稼働に強く抗議する。同原発を巡っては、2017年と20年、広島高裁が運転を差し止める決定を出したが、いずれもその後、取り消されている。

伊方原発では、2020年の定期点検時に複数のトラブルが発生、さらに2017年3月~19年2月にかけて、宿直勤務中の職員が複数回無断外出し、保安規定違反状態となっていたことも明らかになっている。特に深刻なのは後者である。四国電力は内部告発で明らかになったとしている。つまり所内では違反者が存在することがある程度知られていたということだ。四国電力は「原子力安全に対する意識のより一層の向上とコンプライアンスの徹底を図る」というが、原子力安全文化以前の段階だといえる。このような事業者に原子力を運転する資格があるのか。

伊方原発の敷地から600mの位置を中央構造線が通っており、さらに阿蘇山の噴火による影響も懸念される。また伊方原発は海上自衛隊とアメリカ海兵隊が共同利用する岩国基地とその訓練空域の往来途上に位置しており、航空機衝突リスクも存在する。

四国電力は、伊方3号機の代替エネルギーの調達費用などによって収支が毎月30億円悪化するとしている。しかし、これは、運転していない伊方3号機を維持した上で、追加で火力用の燃料などを調達しているために発生するものだ。有価証券報告書によれば、四国電力が原発の維持(廃炉済みの伊方1・2号機含め)に支払った費用は2020年度、552億円に上る。この年、原発では1kWhも発電していないにも拘らずだ。

四国電力は原発再稼働のリスクを住民に押し付けず、自らの経営判断の誤りを受け入れ、コスト高で将来性がなく危険な伊方原発3号機を廃止するべきだ。原発という重荷から開放されることで、四国電力は経営資源を、今後大量導入が求められる再生可能エネルギーに注ぐことができる。

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