原子力規制庁の運転期間延長事前検討問題
12月27日、原子力規制庁は、原発の運転期間延長について、7月時点から経済産業省と事前調整を行っていたことを明らかにした。21日、当室に寄せられた内部通報資料(図参照)を公表したことを受けてのことだ。この資料が公表されるまで原子力規 制委員会は規制庁のこうした動きを把握していな かった、としている。
内部通報資料(原子力規制庁が8月29日、環境省説明用に作成
運転期間延長は8月24日、岸田首相がGX実行会議で経産省などに検討を指示した。これを受けて、 経産省は9月22日、筆者も出席する原子力小委員会で検討方針を説明、経産省は原子力規制委員会と調整する必要性について発言していた。これまで、原子力規制委の山中伸介委員長は、この経産省の動きを見て、みずから経産省からヒアリングする必要性 があると思い、10月5日の原子力規制委に経産省を招き、規制庁に検討を指示したと説明していた。
ところが、今回明らかになった経緯では、7月時点で規制庁は経産省と運転期間延長についての打合せを始め、面談を7回、また電話で30回以上打合せを行っていた。また8月29日までに、経産省は原子力規制委が所管する原子炉等規制法に規定された運転期間について、自らが所管する電気事業法に移管する方向性を示し、規制庁は認めていたことが資料 から読み取れる。
9月22日の原子力小委での経産省の発言、10月5 日の原子力規制委での経産省と規制庁の発言はいずれも、すでに検討していながら、これから検討を開始するかのように演技をしていた。また、12月1日、当室は原子力規制委に、10月以前の運転期間延長に関する検討についての情報開示請求を実施したが、検討していないため、資料は存在しないので、開示請求を修正するよう当室に依頼までしていた。
山中委員長は、「頭の体操」であるとして規制庁の事前調整を容認する態度を示している。だが、これでは何のために、規制庁を経産省から分離したのか。規制委は規制庁を統治できているか、きわめて疑わしい。規制委発足から10年、規制を担保しているはずの独立性が崩壊しているのであれば、深刻な事態だ。厳しく問われなければならない。
(松久保 肇)