タニムラボレターNo.014 東京都内の放射能測定結果

『原子力資料情報室通信』第471号(2013/9/1)より

 

 

 

 

 

東京都内の放射能測定結果

 8月には広島と長崎を訪れる機会がありました。長崎で出会った人から、東京は放射能汚染で危険ではないのか? 東京の電気は足りているのか? などの質問を受けました。わたしには西日本に親しい友人がいないので、九州に住む人が東京の住環境が深刻な状況だと思っていることに驚きました。考えてみると、福島県内や海洋の放射能の話題がニュースにあがってばかりで、東京の状況については伝わっていないように思います。
 今号では東京都内で採取した試料の測定結果を報告します。試料は当室スタッフの居住地である多摩北部と、当室がある新宿区で採取されたものです。多摩北部も新宿も、文科省のモニタリング結果によると空間放射線量0.1μSv/h以下に該当する地域です*1,2
 多摩北部の採取地点は戸建の多い住宅地です。採取地点の数百メートル圏内には私立学校や広い面積を持つ競技場などがあり、都内では森林や露出した土壌の比較的多い地域で、田畑も点在しています。採取地は震災以降に除染などは行っていません。新宿の採取地点はビルが密集する地域で小さな公園や街路樹以外に土壌は見当たりません。
 測定結果を表に示しました。多摩北部で採取された苔と土およびリター層*3の混合物から約4,600ベクレル/kgの放射性セシウム(セシウム137と134の合計値)を検出しました。特に汚染が高いと思われる雨どいの下から採取した試料の結果です。それ以外の場所の苔からは約1,900ベクレル/kgを検出しました。この周辺の土壌で栽培された香草類からも微量の放射性セシウムを検出し、新宿の街頭で育ったみかんからも検出しました。 わたしは福島から自主避難し、東京で生活することを決めましたが、この選択が正しかったか、東京が安全かどうかは確信をもって判断できません。ここで生活すると決めたからには無用な被ばくを避けながら脱原発へ取り組んでいこうと思います。

(谷村暢子)

 

表 東京都内で採取した試料の放射性セシウム濃度測定結果
測定器:NaIシンチレーション検出器(EMF211) 試料採取は測定日の数日~1か月前
測定時間:2,3,4,6,7,9は24時間、1は2時間、5は16時間、8は8時間

 

 

 

 

 

 

 

 

*1 radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/5000/4897/24/1910_100601.pdf

*2 原子力資料情報室のホームページでは、2011年3月14日以降、事務所周辺の空間放射線量率を継続して測定し、結果を掲載していますのでご覧ください。

*3 土壌表面にある枯葉等のくずで生物によってまだ分解されていないもの

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