タニムラボレターNo.015 放射能測定の不確かさ
『原子力資料情報室通信』第472号(2013/10/1)より
放射能測定の不確かさ
通信471号には、同じバスの中の5台の空間放射線計測器が別々の値を示した話題がありました。放射性物質が放射線を出するタイミングは一定の間隔ではなく、揺らいでいて不安定です。何回か連続して放射線を出したあと、しばらく放射線を出さないこともあります。放射能測定では、なるべく長い時間をかけて測定器に入る放射線の数をカウントし、それを平均した結果のほうが信頼できます。土壌や食品に含まれる放射性物質濃度(ベクレル)も同じで、測定結果には必ず不確かさが含まれます。
今号は放射能測定の不確かさについて、実例をあげて説明します。実験では測定容器に入った土壌試料を、測定時間5分、10分、20分、60分に変更して測定を行いました
放射能測定の結果は“A±B”というかたちで出てきます。±Bのことを不確かさと言い“不確かさ±3σ”などと書かれている場合もあります。この表記の意味は、放射性物質の濃度はAである可能性が一番高いが、(A-B)の濃度かもしれないし、(A+B)の濃度かもしれない、ということです。とても頼りない答えですが、放射能計測では真実の値は分かりません。(A-B)~(A+B)の範囲に、真実の濃度がある確率が高いと言い方もできます。詳細は省きますが、不確かさ±3σというのは「(A-B)~(A+B)の範囲に真実の濃度があるという測定結果は99.7%の確率で正解ですから信頼してください1)」という意味です。
また、N.D.、測定下限値など言葉は「これ以下の小さい信号だったら、ノイズに埋もれてしまって本当に放射性物質があると言い切れない」という意味です。
実験結果をみると、測定時間を長くするにつれて不確かさの値が小さくなることが明らかです。時間をかけて測定するほど、真実の値に近づけます。測定時間を4倍にすると不確かさは半分になります。もし、真実の値の範囲が測定下限値を下回った場合は、試料に放射性物質が含まれているかどうか(ある信頼性の条件下では)分かりません。
(谷村暢子)