タニムラボレター No.025 東京を流れる荒川の堆積物の調査(3)
荒川の堆積物に含まれる放射性セシウム濃度を測定したところ、採取位置の数メートルの違いによって汚染の差が見られました。水路の幅約300メートルのうち、採取ができたのは岸から20メールまでの範囲です。この原因を考えるため、堆積物に含まれる土壌粒子の大きさを調査しました。
測定方法
測定はJIS規格で指定されている土の粒度試験方法に基づいて行いました。まず、ふるいによって粒径を分けるのですが、実使用上の最小の網目サイズは75μmとされ、それ以下の粒径を調べるには沈降試験を行います。これは、細かな土粒子を水に分散させ、粒子が重力によって沈降する速度を調べ、粒径を導き出す方法です。実際の測定では、分散液の見かけ上の比重を、24時間にわたって測定します。結果は、粘土(~5μm)、シルト(5~75μm)、細砂(75~425μm)、粗砂(425μm~2mm)に分類し、含有率を算出しました。
堆積物の粒度分布
4地点の堆積物のうち、放射性セシウム濃度が高い順に並べると15m地点、10m地点、20m地点、5m地点となります。この順に測定で得られた粘土の含有率を並べると24%、19%、17%、15%となり、さらにシルトの含有率を並べると52%、41%、36%、19%となりました。放射性セシウム濃度が高い堆積物ほど細かな粒子が多く含まれていることが分かりました。セシウムイオンは土壌の粘土鉱物に強く吸着することが知られており、今回の結果はこれと矛盾しないものでした。
河川で運搬される砂や泥は、水の速度や粒子の重さによって沈降しやすい場所があります。特に荒川下流域は水位が低いため、川の流れに加えて潮の満ち引きや波の影響が複雑に絡み合っているようです。堆積物は絶えず移動していますから、それによって汚染状況も変わっているはずです。
今回の結果は固定値ではありません。1回の調査で終わらせず、関心を持ち、調べ続けることが大切だと思います。
(谷村暢子)