新しい時代へ 高浜原発の運転差し止め、仮処分決定

 『原子力資料情報室通信』第491号(2015/5/1)より

 かねてから、高浜原発3・4号機(ともに87.0万kW、1985年運転開始)の再稼働の是非をめぐって住民と関西電力とが争ってきた(本誌前号、中島多恵子論考)。福井地裁は4月14日、住民の主張を認め、運転差し止めの仮処分を命じた。日本の原発訴訟では初めての司法の決定である。2011年福島原発過酷事故を省みての、原発のない時代の始まりがうかがわれる。
 原子力規制委員会という専門家集団は、高浜原発3・4号機が新基準に照らして適合性審査に合格と判断した。だが、新基準そのものにも、審査内容にも疑問があることが、各方面から指摘されてきたところである。
 原発を推進するために基準をつくる「専門家」たちは、どうしても一定の思考の枠の中で考えざるを得ない。“審査には合格だが、安全とは言わない”と規制委員長が言うのは、むしろ正直なのである。経済性や利便性を最優先するのではなく、いのちを大事にし、平和と安全・安心を希求する「非専門家」の住民・市民がこの枠を共有するとは限らない。当然ながら両者の間で判断の相違が生じうる。
 その両者の判断と選択に司法が加わったうえでの今回の決定である。判決文を読んだ規制委員長のとんちんかんな判決批判は、「専門家」というものの姿を露わにしている。
 22日、川内原発の仮処分の申し立てでは住民は敗訴したが、専門家だけには任せておかない、という大きな時代の流れは、もはや変わらないだろう。       (2015年4月22日)

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