もんじゅ廃炉に関し福井県などに要請

もんじゅ廃炉に関し福井県などに要請

高速増殖原型炉もんじゅの安全な廃炉を監視する「新もんじゅ市民対策委員会」(委員長:伴英幸)は、原水禁日本国民会議や原発に反対する福井県民会議などと一緒に、7月10~11日に福井県、敦賀市と、その両議会、そして日本原子力研究開発機構(以下、機構)と原子力規制委員会(以下、規制委)に対して、安全な廃炉を求めて要請を行った。ここでは機構と規制委への報告を中心にまとめた。
地方行政・議会に対しては昨年11月に5項目の提言を行ったが、実現したのは、廃止措置申請への合意と安全協定の締結の2項目。そこで今回は、残る3項目に1項を加えた4項目を要請した。①危機管理の基本原則の再認識、②核燃料、ナトリウム、解体廃棄物などの県外搬出に固執せず、リスクを最小化する処理方法の開発をエネルギー研究開発拠点化計画に位置づけること、③もんじゅの耐震性や火山評価に関して機構に再検討を求めること、④福井県原子力安全専門委員会の議事録を公開し、環境安全管理協議会の中に多様な立場からもんじゅ廃止措置に関する協議を行う場を設置すること、などである。追加したのは③の項目だ。

敦賀市議会の副議長に要請書を手わたした

機構へ8項目の要請
機構の廃炉措置申請の主たる内容は2022年度までに実施する原子炉からの燃料取り出しと2次系のナトリウムの取り出しに関してのもので、これ以外は22年度までに変更申請で具体化するとしている。要請は以下の8項目。要請書では理由を別書きにしているが、ここでは紙幅の都合で、理由を要約しつつ新たな内容も加えて、各項目に続けた。
①第1段階の燃料体の取り出しに当たっては、安全を最優先にして確実に行うこと。また、リスクアセスメントの結果に基づき、想定される事故、トラブルやその備えを予め住民に広く周知すること。
最初に行う燃料体の取り出しは、炉外燃料貯蔵槽にある使用済燃料をガスと蒸気でナトリウムを洗い流した後に燃料池に入れる作業で、過去に2体の経験しかない。まずはここで想定されるトラブルやその対処を予め住民に広く周知しておくべきだ。
②抜き取った2次系ナトリウムは長期に保管することなく、敷地内での安定化処理を行うこと。
2次系ナトリウムは3ループあるが、この全量を排出するにはタンクの容量が40m3分不足するのでその分のタンクを新設する。タンクに収納されたナトリウムは売却先が決まるまで貯蔵することになっている。しかし、不具合が起きて空気中の湿分と反応すれば劇毒物に指定されている水酸化ナトリウムが発生する。従って、敷地内に設備を新設して無害化措置を行うべきだ。
③廃止措置期間中に性能を維持する施設については、保安規定や保全計画をしっかり作成し、それに基づいて確実な維持管理を行うこと。
もんじゅは廃止措置期間に移行しても炉心に核燃料が存在しているため、一定の設備を運転し続けなければならない。しかし、どの機器を今後どのように点検していくかの計画は先送りされている。これまで機構は保安規定違反を繰り返して運転主体失格の烙印を押され、会計検査院からも厳しい指摘を受けたところである。12月に予定されている定期点検に間に合わせるには、9月にも計画の規制委員会への提出が必要とされており、しっかりとした取り組みが必要である。
④1次系ナトリウムの抜き取り、処理処分方法の検討に当たっては、安全性を最優先の条件で進めること。
これまでの説明では原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入口配管を活用して、1次系ナトリウムを抜き取るとされているが、それでもなお残留ナトリウムが発生するのは避けられず治具開発が必要とされている。また、1次系ナトリウムの抜き取りと模擬燃料体や中性子遮蔽体の抜き取りのどちらを先にするかも検討事項と説明されている。このため認可された廃止措置計画では「抜き取り方法及び時期については第1段階で検討」とされている。いくつか考えられる方法から実施する方法を選択する際には、安全性の一番高いものとすべきである。
1次系ナトリウムに関しても敷地内での安定化処理を行うべきと考えるが、1次系は放射化により生じたナトリウム22(半減期2.6年)が十分に減衰する期間、処理物は処分することなく保管すべきである。
⑤もんじゅ使用済燃料は再処理せずに、長期貯蔵による対策をすすめること。
政府は再処理の方針を出しているが、実際問題として再処理できる設備は国内にはない。フランスに置いても技術的にも法的にももんじゅの使用済燃料は再処理できない。であるから、長期貯蔵の研究をすすめるべきだ。
⑥解体廃棄物の処分方法の検討に当たっては現実を直視し、幅広く理解の得られる方法を選択すること。
県外搬出を基本方針としても、実際問題として受け入れる自治体が現れるとは考えにくい。したがって搬出に拘らず敷地内貯蔵に向けて、先送りせずに取り組むべきである。また、クリアランスレベル以下の廃棄物について「できるだけ再利用に供する」とされている。文部科学省は、クリアランス制度については社会に定着するまでの間、「原子力事業者等では、クリアランスされたものについて自ら率先して再生利用などを進める」との見解を示している。この見解どおり、機構内での率先利用に限定すべきである。
⑦もんじゅの耐震性や火山灰降下量の再検討を行うこと。(後述)
⑧情報公開・透明性に務めること。(略)
私たちの要請に対応した杉井芳弘同事業本部地域共生部地域共生課長は、要請は上層部に伝える、地元への約束、廃止措置計画に従い、規制委からの指導を受けて、安全第一で進めたいとコメントした。

原子力規制庁地域原子力規制総括調整官(福井担当)への要請

西村正美総括調整官とは要請に対する回答やその後のやり取りができた。要請は4項目。①いっそう厳しい監視と対応。②耐震安全性の再評価、③火山灰降下量の再評価、④ナトリウム無害化の勧告、である。①は言うまでもない。②は美浜原発の再評価結果(993ガル)に基づく再評価を求めた。これに対して廃止措置許可書にそれを反映した評価を実施しているとの返答だった。しかし、燃料集合体に対する耐震安全性が評価されていないことを指摘、確認するとの返答を得た。③大飯原発での議論を基に火山灰降下量をそれに併せて再評価すべきとの要請に対して、大飯原発で評価中であり、確定したら、結果はもんじゅにも及ぶだろうとの返答。④は被ばく線量は評価しているとの返答。化学毒性に関する評価が行われていないことを指摘したが、所管外との返答。所管外のことをすればいろいろと文句を言われると弱腰であった。言い分も分からないでもないが、縦割り行政には落胆した。

(伴英幸)