【視点】原発はあてにならない

『原子力資料情報室通信』第558号(2020/12/1)より

 11月3日に大飯原発4号機が定期検査に入り、関西電力の稼働原発4基すべてが止まることになった。新規制基準に適合して再稼働した原発9基のうち8基が止まり、稼働しているのは九州電力の玄海4号機のみとなった。同機は12月に定期検査入りの予定だが、その前に玄海3号機が定期検査から復帰するので、稼働ゼロは回避される。さらに各電力は特定重大事故等対処施設の設置工事を急ぎ、川内原発1号機は11月19日に発電を再開した。2号機も、また関西電力の高浜原発3号機も12月に再稼働させるという。トラブルがなければ、年末までに4基が稼働となる見込みである。1基のみの期間は2週間ほどで済んだ。
 それにしても、2020年の年明けの時点ではこんな事態になることは想定されていなかった。ところが新年早々、1月17日の広島高裁による運転差し止め仮処分決定で四国電力唯一の原発である伊方原発3号機が止まってしまう。高浜原発3号機は4月10日に定期検査を終了し、8月3日の特定重大事故等対処施設設置期限までは運転するつもりだったところ、2月に見つかった蒸気発生器伝熱管の損傷原因が解明できずに、そのまま停止し続けることとなった。
 そこで関西電力は、新型コロナウイルス感染拡大防止を掲げて大飯原発3号機の定期検査入りを5月8日から7月20日まで延期して動かし続ける。その定期検査で8月31日、加圧器スプレイライン配管に異常が見つかり、9月7日、亀裂が確認された。10月19日の原子力規制委員会「実用発電用原子炉の検査に係る公開会合」で、次回定検での配管交換を主張するも認められず、定検を延長せざるをえなくなったのだ(本誌前号「短信」参照)。
 11月4日、共同通信は「不安定な稼働状況は、原発を『重要なベースロード電源』と位置付ける政府の構想とは大きく乖離(かいり)している」と配信した。
 関西電力は当初、5月に高浜原発1号機、7月に美浜原発3号機を再稼働すると予定を発表していたが年内にも再稼働はならず、それぞれ来年3月と1月に延期された。2019年に続いて20年にも新規の再稼働はゼロが続いたことになり、その点でも年明け時点での想定が崩れたことになる。
 もっとも、原発があてにならないことは、今回初めてわかったことではない。伊方原発3号機の運転差し止め仮処分の際にも1月18日付産経新聞が、こう書いていた。「国がエネルギー政策で『安定電源』と位置付ける原子力発電が、その役割を果たす難しさを突きつけた」と。
 むろん、それが初めてでもない。運転差し止めの仮処分はたびたび決定されるようになり、事故による運転停止は、頻繁に、しかも突然に発生する。さらに、原発が事故を起こさなくても送電系統で異常があれば、事故につながらないように原発の運転を止められることがある。
 原発は電力の大消費地から離れて建てられるため長距離の送電で電圧が不安定になり、送電が停止されて大規模な首都圏停電を引き起こしたりもした。地震などで複数の原発が同時に止まる例も少なくない。そして原発は、安全確認が必要なため、一度止まると運転再開に時間がかかる。出力が大きい原発が止まることは、「安定電源」「ベースロード電源」の役割を果たせず、電力供給に大きな穴をあける。
 あてにならないと言えば、1997年12月に京都で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議で「京都議定書」が採択され、日本政府は2010年度までに21基の原発新増設を打ち出したが、うち8基は計画が撤回され、8基は未だに建設中ないし計画中、運転に入れたのは5基だけ、それもすべて現在停止中だ。
 原発でCO2を削減するとの言いたてが戯言でしかないことは、疾(と)うから証明済みなのである。

(西尾漠)