【原子力資料情報室声明】数か月先さえ見通せない日本原燃に六ヶ所再処理工場を操業する資格はない

2024年8月23日

NPO法人原子力資料情報室

8月23日、日本原燃㈱は、六ヶ所再処理工場の完成目標を2024年9月末から延期することを青森県に報告した。数え方にもよるが、27回目の目標延期となる。新しい目標は29日に発表するとしているが、報道によれば2026年度末まで2年半延期すると見込まれている。

六ヶ所再処理工場の9月末完成が不可能なことはだれの目にも明らかだった。だが、日本原燃は9月末完成に固執してきた。むつ市の使用済み核燃料の中間貯蔵施設をめぐって8月9日に青森県・むつ市と事業者の間で取り交わされた覚書に影響を及ぼさないよう、延期発表を先延ばししてきたという見方もある。だが、これまでも期限の1か月前頃になって延期を発表することは繰り返されてきた。

六ヶ所再処理工場はもともと40年間の運転が前提とされてきた。最近になって経産省はそのような前提はなく、延長は可能だという風に見解を変えている[i]。だが数か月先も見通せない事業者に、1993年の建設開始から31年が経過し、建設中にもかかわらず機器の劣化の始まっている施設の、40年、またはそれ以上の運転が可能なのか。

六ヶ所再処理工場は膨大な放射性物質を取り扱う極めて危険な施設であり、プルトニウム保有量を減らしていくという国際公約もあることを考えると、このように先の見通せない事業者に六ヶ所再処理工場を運転する資格も能力もない。また政府・電力会社は六ヶ所再処理工場が運転できるという前提で、さまざまな計画や約束を繰り返しているが、核燃料サイクル政策が破綻しているという現実を直視するべきだ。

以上


[i] 39回原子力小委員会(2024年6月25日)で、当室から委員として参加している松久保の質問への回答として、経産省は「この施設について設計上の評価、具体的に、40年運転したときにその程度の安全裕度はあるというようなことを確認するといった、評価の目安として40年というものがあるということは承知しておりますけれども、この何らか40年間で運転をここで終わりよというようなことを何らか決めがあるとか、法令上の制約があるというものではないというふうに承知」「昔のいわゆる17年政策大綱が議論されたときに比べると、やはり稼働基数や使用済燃料の発生量は明らかに減っておりますし、その情勢変化の中で、果たしてこの中間貯蔵をした後の運び出し先、再処理を行うときに、これは第二再処理工場といわゆる言われている、次の続く再処理工場といったところというような、昔の想定なのか、それともこの六ヶ所再処理工場を例えば長くしっかりと使っていくといったことなのか、どういった想定をしながら将来に向かって準備をしていくということが、より適切な想定として考えられるのか」(www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/039_gijiroku.pdf)と説明している。

だが、当の経産省自身がウェブサイトで「フル稼働時 800トン/年(40年間の計画、累計 32,000トン)」と記載している(www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/shiyozuminenryo.html)。また原子力委員会の新大綱策定会議(第4回、2011年2月21日)で、国は「現在の大綱では中間貯蔵された使用済燃料及び使用済MOX燃料の処理については、2010年ごろから検討を開始いたしまして、使用済燃料を再処理し、 回収されるプルトニウム、ウランを有効利用するという基本方針を踏まえ、六ヶ所再処理工場の操業終了、約40年後でございますが、に十分間に合うまでに検討することとしている」とも説明している(www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei5/siryo7.pdf)。これまで40年という運転期間が前提だったことは明らかだ。

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