タニムラボレターNo.021 池の底の土壌汚染と空間放射線量率

『原子力資料情報室通信』第479号(2014/5/1)より

 

 

 

 

 

 ビオトープで最も放射性セシウム濃度が高い土壌は池の底にありました。最も空間放射線量が低かった場所も、池のそばでした(本誌476号参照)。
 下にビオトープの概略図と空間放射線量率を示します。地上1mでの計測値は、池のそばで0.077~0.082μSv/h(底質: 1,700~2,400ベクレル/kg)、そこから10 mほど離れたキクイモ自生地は0.097~0.108μSv/h(土壌: 約700ベクレル/kg)でした。どうして池の近くの方が低いのでしょうか。
 放射線は物質を透過する性質をもっています。空気中ではアルファ線は数cm、ベータ線は数mくらい、ガンマ線は遠くまで飛ぶことができます。しかし、ガンマ線はどこまでも遠くへ飛んで行けるわけではありません。物質にぶつかると、エネルギーをいろいろな形に変えて失っていくので、ガンマ線の強度は低くなります。
 ガンマ線を防ぐものとしてまず思い浮かべるのは鉛でしょうか。土壌や食品を扱うガンマ線測定器は、周囲を分厚い鉛で囲まれています。外部のガンマ線の影響を少しでも減らし、精度よく測定するためです。
 鉛ほど効果はありませんが、水にもガンマ線を弱めるはたらきがあります。アイソトープ手帳によると、セシウム137が発するガンマ線が厚さ60 cmの水を通過したとき、実効線量(人がうける被ばく量)は約10分の1になるとあります。鉛の場合は、たった2.5 cmで同様の遮蔽効果があります。
 この日のビオトープの池は50 cmほどの水位でした。池の底の土壌の放射性セシウム濃度が高くても、水によるガンマ線遮蔽効果があるので、池のそばの空間放射線量は上がらないと考えられます。(谷村暢子)

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